親父の背を見ながらボルドー品種でつくった、緻密でふくよかな味わいの赤。

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    日本ワインで乾杯!We Love Japanese Wine!

    #44|
    鹿取みゆき・選&文
    尾鷲陽介・写真
    selection & text by Miyuki Katori
    main photograph by Yosuke Owashi

    がんこおやじ

    ワイン名にもいろいろありますが、「がんこおやじ」ほどユニークなものは日本中どこを探してもそうそうありません。つくり手は、大阪にある「仲村わいん工房」の仲村現二さん。がんこおやじというのは、現二さんの父である光夫さんのこと。そもそも、この工房でワインづくりが始まったのは、光夫さんが、1957年に酒屋を始めたことがきっかけだそうです。光夫さんは、酒屋の商売を補うものとしてワインづくりを考えたのです。畑は、古くから生食用ブドウの一大産地として知られている、大阪市郊外の羽曳野(はびきの)市にあります。醸造所は、畑の近くにある自宅の蔵を改造して建てられました。

    怖いもの知らずなうえ、一本気で細かいことが大嫌いな光夫さん。酒造免許をもらう立場にもかかわらず、国税局の鑑定官を怒鳴り散らしていたとか。そんな光夫さんの姿が、いまも現二さんの脳裏に焼きついているのです。

    当初は、光夫さんがブドウ栽培と醸造を、現二さんが酒販店の営業も含めた販売を担当。91年からは、現二さん自身もブドウを育ててワインをつくってみたいと、栽培を手がけるようになりました。光夫さんが育てていたのは、デラウェア、甲州、マスカット・ベーリーAといった生食も兼ねる品種でしたが、現二さんは、ワイン用品種といわれる中でもボルドー地方で栽培されているものを植えました。

    「跡を継ぐんなら、同じことはできんと思ってね。それに、家が酒屋でコテコテのカベルネばかり飲んでたから、あれがワインだと思っとったんや。そういうワインの原料と同じブドウでワインをつくったら、どんなワインができるんか、興味津々だったんよ」と振り返る現二さん。ちなみにコテコテのカベルネというのは、なんと世界の偉大なワインといわれるボルドー地方の「ムートン」のことだそうです!

    ワインのつくり方は、自生発酵させ、生ビール用のステンレスの樽で保管して、在庫の状況を見ながら瓶詰めするという、実にユニークな方法。フレッシュさを保ちながら、緻密でふくよかさのある味わいです。フレーバーの広がり方も見事。初めて飲んだ人は、そのおいしさに度肝を抜かれるのではないでしょうか。年末の忘年会で出せば、注目を集めるのは間違いありません。

    親父の背を見ながらボルドー品種でつくった、緻密でふくよかな味わいの赤。
    このワインには、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、マスカット・ベーリーAに加えて、「ミツオレッド」という品種が4%ほど入っています。これは、光夫さんがどこからか見つけてきて植えた謎の品種。現在、この品種の出自を探る研究が進んでおり、メルロが近いのではないかといわれています。

    がんこおやじ

    ワイナリー名/がんこおやじ
    品種と産地/セカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、マスカット・べーりーA、ミツオレッド(大阪府羽曳野市)
    容量/720ml
    価格/¥2,592(税込)
    問い合わせ先/仲村わいん工房
    TEL:072-956-2915
    www.nakamura-wine.jp