小樽の寿司に合わせてブレンド!? 飲んだ人が幸せに浸れるきりっとした白。

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    日本ワインで乾杯!We Love Japanese Wine!

    #39|
    鹿取みゆき・選&文
    尾鷲陽介・写真
    selection & text by Miyuki Katori
    main photograph by Yosuke Owashi

    tabi 2016

    小樽駅から歩いて7分ほどの街中に、1軒のワイナリーがあります。福岡県出身の長 直樹さんが3年前に立ち上げたワイナリーです。九州出身の長さんが、なぜ北海道でワインをつくろうと思ったのでしょうか?

    「香り豊かなワインをつくりたいと、全国各地の土地を見回した時に、気候が涼しい北海道が一番適していると思ったからです。私自身が尊敬するつくり手たちが活躍している土地だったというのも、北海道でのワインづくりを決心する後押しになりました」と、長さんは話してくれました。

    第20回でご紹介したバッカスのように、涼しい気候のもとで育つブドウの品種の中には、香りが豊かなものが多いのは確か。それだけではなく、同じ品種でも北海道で栽培するとより香りが豊かになる傾向があるのです。

    そんな香り豊かなブドウのひとつに「旅路」という品種があります。果皮全体は赤紫色っぽいのですが、白い縞がうっすらと入っています。小樽では、主に生食用として昔から親しまれてきたそうですが、道外に出荷されることはあまりありません。私自身、東京のスーパーで見かけたことはいままで一度もありませんでした。長さんは、他の生食用の品種にはない、北海道らしい冷涼な香りに惹かれて、このブドウでワインをつくることにしたそうです。また、彼が畑を拓いた小樽市塩谷がこのブドウの発祥の地だということにも、特別な縁を感じたそうです。

    ワインからは、ライムのような涼し気な香りが立ち上り、きりっとした酸とほんのわずかな渋みで小気味よい味わいに仕上がっています。地元の寿司に合わせようと、長さんは畑や収穫時期の異なるワインを4種類つくって、なんと1%ずつブレンド変えて、最も相性のよい比率を考えたそうです。

    彼が願っているのは、飲んだ人が幸せな気持ちに浸れるワイン。ワイン名の「tabi」には品種名の旅路と幸せ探しの旅のふたつの由来があるそうです。

    小樽の寿司に合わせてブレンド!? 飲んだ人が幸せに浸れるきりっとした白。
    長さんは、もともとワインの販売やソムリエの仕事に携わっていました。そのためワインの味わいを最終的に決めるときには、必ず料理と一緒に何度も試食と試飲を繰り返すそうです。

    tabi 2016

    ワイナリー名/オサワイナリー
    品種と産地/旅路(北海道余市)
    容量/750ml
    価格/¥3,000
    問い合わせ先/オサワイナリー
    TEL:0134-61-1955