クリーミーなカキの豆乳鍋から本場の石狩鍋まで、いまこそ食べたい“冬鍋”のお手軽レシピ5選。

  • 写真:長谷川 潤
  • 文:小久保敦郎(サグレス)

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いつもの鍋に飽きたら、少し変化球のレシピを取り入れてみては。定番のタラちり鍋から変わりダネのエスニック鍋まで。冬本番のいまこそ食べたい5種の鍋を、手軽なレシピで紹介する。


カキの豆乳鍋──豆乳が、クリーミーなカキと相性抜群!

プリプリで濃厚なカキ鍋は、冬に一度は味わいたい一品。

冬に食べたい貝類ランキングがあれば、トップ争いに絡むのは確実──それほど、世の中にはカキ好きが多い。カキが“海のミルク”と呼ばれるのは、乳白色の見た目だけが理由ではない。牛乳同様、ビタミンやミネラルなどさまざまな栄養素がバランスよく含まれているからだ。カキ鍋の代表選手は味噌味の土手鍋や大根おろしを入れたみぞれ鍋だが、豆乳鍋も実にいい。クリーミーなカキと豆乳とは相性抜群。貝と牛乳でつくるクラムチャウダーをイメージするとわかりやすい。スープはコクと旨味を足すために、白味噌を加えるのがポイント。カキ以外にも、マイタケやエノキダケなどキノコをたっぷり入れることで、豆乳鍋にふさわしいヘルシーな仕上がりに。締めにお薦めしたいのは、やはり豆乳と相性がいい、うどん。残ったスープで少し煮込み、麺がふんわりしたら食べ頃だ。


材料(4人分)

カキ…8粒

片栗粉…適宜

シイタケ…2個

マイタケ…1/2パック

エノキダケ…1/2束

カブ…2個

くずきり…1/2パック

昆布出汁…400ml

酒…大さじ2

豆乳…400ml

白味噌…大さじ3

木綿豆腐…1/2丁

セリ…1/2束


つくり方

1. カキは片栗粉を少量ふりかけて洗う。シイタケは3~4mm厚さにスライスし、マイタケ、エノキダケは手で割いて小分けに。カブは八等分にし、くずきりが乾物の場合は下ゆでして戻しておく。

2. 昆布出汁、酒、豆乳を鍋に入れ、弱火にかけて温めながら白味噌を溶かし入れる。

3. 温まってきたらカキとセリ以外の材料、および豆腐を二等分して投入。この時、煮立たせすぎない。

4. 具材に火が入ったら、カキと、セリをちぎりながら入れて完成。


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ブイヤベース風鍋──おもてなしにもなる、お洒落なひと品。

フランス料理のブイヤベースをイメージした鍋。

南仏プロバンス地方の郷土料理として知られるブイヤベース。特にマルセイユでは“ブイヤベース憲章”なるものがあり、使う魚介や調理法が定義されている。今回、紹介するのは、そのエッセンスを踏襲して鍋にアレンジしたもの。エッセンスとは、何種類もの魚介類そのものと、そのエキスが溶け出したスープのふたつの味を楽しむこと。入れる具材はキンメダイ、有頭エビ、ホタテやアサリなど魚介を多種類かつふんだんに使う。彩りよく豪華なひと品は、特別な日のご馳走やホームパーティにもふさわしい。まずは魚介類を取り分け、具を味わったら、多彩な魚介の味わいが複雑に絡み合うスープを堪能したい。飲み物はキンキンに冷やした白ワインかロゼを合わせたいところ。スープが余ったら、クスクスにかけてリゾット風にしてもおいしい。


材料(4人分)

アサリ…300g

キンメダイ…1尾

玉ネギ…1/2個

セロリ…1/3本

オリーブオイル…大さじ1

ニンニク…1片

水…800ml

白ワイン…150ml

サフラン…少々

有頭エビ…4尾

ムール貝…4個

ホタテ…4個

フェンネル…適量


つくり方

1. アサリは塩水に浸けて砂を吐かせる。キンメダイは頭とハラワタ、骨を除いて4~5cm幅の切り身にする。

2. 玉ネギ、セロリをみじん切りにする。

3. 鍋にオリーブオイルとつぶしたニンニクを入れて弱火にかける。香りが出たら2を加えてしんなりするまでよく炒める。

4. 3に水、白ワイン、サフランを入れて煮る。

5. 煮立ったらエビは頭ごと、他の魚介も入れて蓋をする。中火で加熱し具材に火が通ったら、フェンネルを添えて完成。


タラちり鍋── 大人になるほど染みる、王道ならではの魅力。

何度も食べたくなる冬の大定番。

シンプルかつ王道、冬の定番の鍋といえばタラちりだ。年齢を重ねるに従い、この鍋の魅力を再発見する人も多いだろう。スープに味つけしないが故、大事にしたいのが出汁のとり方。昆布をひと晩浸けた水で炊き始めると、より味わい深くなる。少し贅沢を楽しむなら、タラの白子を追加して。酒はやはり日本酒、できれば熱燗でいきたい。最後は溶き卵を落として雑炊で締めるべし。


材料(4人分)

水…800ml

酒…50ml

昆布…7cm

長ネギ…1本

絹ごし豆腐…1丁

タラの切り身…4枚

春菊…1/2本

ポン酢…適量

カボス…お好みで


つくり方

1. 土鍋に水、酒、昆布を入れ、弱火にかけて出汁をとる。

2. 煮立つ寸前に昆布を取り出し、斜め薄切りにした長ネギ、食べやすい大きさに切った絹ごし豆腐とタラを入れる。

3. 火が通ったら、三等分くらいに切った春菊を入れ、さっと火を通す。

好みでポン酢、カボスを添える。

エスニック鍋── 出汁がきいた、アジアンな海鮮野菜鍋。

エビ、イカなど魚介類が主役のエスニック鍋。

鍋大国といえば日本だけれど、ベトナムでも鍋は日常的に食べられているし、タイにはタイスキがある。そんな東南アジアの味覚をイメージしたのがエスニック鍋だ。魚介類はエビとイカをチョイス。その他、セロリ、トマト、香菜などを加え、ヘルシーな海鮮野菜鍋に。ポイントのひとつは、シジミからとる滋味深い出汁にある。そこにレモンの酸味、鷹の爪の辛み、ナンプラー特有の風味が絡み合い、心地よいハーモニーを奏でる。とはいえあっさりした味わいなので、あまり体調が優れない日でも胃に優しく、ほどよい酸味や辛みが食欲を刺激してくれるはずだ。お酒を合わせるなら、エスニックな味に負けないクラフトビールを。締めは平打ちのライスヌードルを入れてベトナムのフォー風にすると、するっと食べられるから不思議。

材料(4人分)

シジミ…200g

イカ…1杯

セロリ…1本

マッシュルーム…8個

水…1000ml

酒…大さじ1

鷹の爪…3本

ショウガ…1片

ニンニク…1片

ナンプラー…大さじ1

有頭エビ…4尾

香菜…1束

プチトマト…8個

レモン…1/2個

塩、コショウ…適宜


つくり方

1. シジミは、塩水に数時間浸けて砂を吐かせる。

2. イカは輪切りにする。セロリは斜め切りに、マッシュルームは二等分にする。

3. 鍋に1と水、酒、鷹の爪、薄切りにしたショウガ、ニンニクを入れて火にかける。

4. 煮立ったらナンプラーを加え、その他の具材を入れて煮込む。

輪切りにしたレモンも加え、好みで塩、コショウをふる。


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石狩鍋──山椒をふって、本場の味に仕上げたい。

定番メニューのひとつ、石狩鍋こそは本格的に仕上げたい。

サケと野菜を味噌味のスープで煮込む、北海道の郷土鍋。サケは新鮮な生ザケを使う。キャベツや玉ネギなどと煮ることで野菜の甘みが溶け出し、スープは味わいを増していく。味噌は白味噌や合わせ味噌など、お好みでOK。さらなるコクを求めるなら、酒粕を入れるのもいい。仕上げに山椒をふるのが、本場・石狩風。締めはバターを追加し、中華麺で味噌ラーメンにすれば最高。


材料(4人分)

生ザケ…4切れ

キャベツ…1/4個

ジャガイモ…1個

木綿豆腐…1/2丁

玉ネギ…1/2個

シイタケ…2個

水…800ml

酒…50ml

昆布…5cm

味噌…大さじ3

醤油…大さじ1

バター…15g

山椒…適宜


つくり方

1. 生ザケ、キャベツは食べやすい大きさにカットする。ジャガイモは皮のまま四等分に切り、下ゆでする。木綿豆腐、玉ネギ、シイタケも食べやすい大きさに切っておく。

2. 鍋に水、酒、昆布を入れて中火にかける。煮立ったら味噌と醤油で味を調えて、具材をすべて加える。

3. 仕上げにバターを加え、山椒をふって完成。

こちらの記事は、2020年 Pen 1/15号「やっぱり、魚かな。」特集からの抜粋です。