誰でも無料で食材が手に入る、夢のような冷蔵庫が街角に登場。

  • 文:鈴木希実

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NEW YORKニューヨーク

誰でも無料で食材が手に入る、夢のような冷蔵庫が街角に登場。

文:鈴木希実

ラテン系移民のコミュニティとして知られている、マンハッタン北部のワシントンハイツにある冷蔵庫、通称「アップタウン・フリッジ」。英語とスペイン語を取り入れたカラフルなペイントは、地元のグラフィティアーティスト、SNOEMANによるもの。 www.instagram.com/thesnoeman photo: In Our Hearts NYC

「いつでも自由に使える食材でいっぱいの冷蔵庫があれば……」。そんな夢のような話が、ニューヨークの街角で現実となっている。「フレンドリーフリッジ」という愛称でも呼ばれるようになったこの冷蔵庫、保存してある食材を誰でも無料で持っていくことができ、逆に余った食材があればそれを置いていくこともできるのだ。ロックダウンで職を失う人が増えるなか、ニューヨークを拠点とするアクティビストグループ「In Our Hearts NYC」が市内のコミュニティボランティアと協同してこの冷蔵庫の設置を進めている。

協力を申し出た商店や住宅は電源と場所を供給し、清掃や食品の補充管理を地元のボランティアが担当。冷蔵庫自体も寄付で募り、賛同するアーティストがペイントを施している。この活動が広まるにつれ、冷蔵庫のメインテナンスを申し出る電機技師や、食品や必要機材を運ぶドライバーが集まるなど、困難な時を一致団結して乗り切るニューヨーカー精神が刺激され、ほかの団体による同様の活動も広まっている。

個人であれば買い物の際に1〜2品多く購入して冷蔵庫に置いていき、レストランやスーパーなどは余っている食材を寄付している。時にはニューヨークの人気ベーカリーのパンや、産地直送のオーガニック野菜や果物が集まるまでになってきた。

パンデミック以前からアメリカが抱えていた、食糧難と廃棄問題の解決策のひとつとしても注目されている。コミュニティとの繋がりを持ち、お互いを助け合う気持ちで心もお腹も満たされる。心温まるこのムーブメントに今後も注目したい。

In Our Hearts NYC
www.instagram.com/iohnyc