進化を続ける、エコノミークラス機内食の最新事情。

  • 写真:小野広幸
  • 文:小松めぐみ

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空の旅での愉しみといえば、やっぱり機内食です。季節感や行き先の食文化はもちろん、昨今では信仰や健康にも配慮したメニューが充実。エコノミークラスでいま人気のメニューを探りました。


<エールフランス航空>日本発着路線で一番人気は、伝統的な料理で構成された「トラディション」。

エコノミークラスの機内食はエアラインごとの個性が顕著。たとえば美食の国フランスのフラッグ・キャリアであるエールフランスの機内食は、全クラスともにシャンパンで始まり前菜、メイン、チーズ、デザート、コーヒー、食後酒が出る充実ぶりです。

このスタンダードな機内食に加え、2012年にはオプションの有料メニュー「ア・ラ・カルトミール」も登場。ワンプレートで、ラインアップは路線によって異なりますが、日本発着路線に搭載されるのは常時3種類。なかでも、伝統的なフランス料理が楽しめる「トラディション」が人気です。

フォアグラのテリーヌや鶏肉の赤ワイン煮込みなどの伝統料理が楽しめる、トラディション。締めはチーズで。デザートにはフランス菓子が。18ユーロ

成田および羽田発の長距離路線のア・ラ・カルトミールは、ここで紹介した3種類が用意されている。搭乗90日前から予約可能だ。

前菜とメインに魚介を使った「オーシャン」。写真のメインは、オヒョウとエビのソテー。15ユーロ

上質なパスタメニューが楽しめる「イタリアン」。ラザニアや鶏のカチャトーラ(猟師風)にティラミスなど、こちらも伝統的な品が並ぶ。12ユーロ

おいしいものは事前に予約、それが快適な空の旅の鉄則。

事前予約制の有料メニューは昨今のトレンドで、シンガポール航空はプレミアムエコノミークラスで展開中。「ブック・ザ・クック(BTC)」がそれにあたります。メニューは搭乗クラス別に異なり、プレミアムエコノミーでは約20種類が用意されています。メインにソースがたっぷりかかっているのは、食材が乾燥しないようにという配慮から。日本路線ではソースに塩麹を使うなど、発酵食品やスーパーフードも多用されています。

トルコのフラッグ・キャリアであるターキッシュ エアラインズの機内食は、甘党が多いお国柄を反映し、デザートの種類が豊富。本格的なトルココーヒーも好評です。エティハド航空はイスラム教徒の多いアラブ首長国連邦(UAE)の国営ゆえ、ハラール認証の食材を使用する一方、非イスラム教徒向けにはアルコールも提供。イギリス資本が入った香港のキャセイパシフィック航空の機内食は、欧亜の選択肢を用意。機内食のレベルは、まだまだ上昇気流モードです。


<シンガポール航空>国籍を超えたメニューで、味の組み合わせを楽しんで。

和食と「インターナショナルセレクション」が用意されています。下写真は、成田発シンガポール行きのプレミアムエコノミークラスで出る「クリーミーディルマスタードソースサーモン」。まろやかなソースのディルの香りが、サーモンと好相性です。右脇は、ほのかに甘い北海道ミルクパン。プレミアムエコノミークラスなら、搭乗前に「ブック・ザ・クック」で予約可能。

<ターキッシュ エアラインズ>トルコらしい食材もちりばめ、メイン料理は食感を重視。

下写真は成田発イスタンブール行きの機内食の一例。チキンはパリッとした皮の食感とジューシーな身の旨味が秀逸です。左脇に添えられているのはトルコの国民食である挽き割り小麦の「ブルグル」を使ったもので、プチプチした食感。エコノミークラスにはフライングシェフは同乗しませんがパンはオーブンで温めて供されます。その他、珍しいトルコビールやワインも楽しめます。

<エティハド航空>イスラム教徒も安心の、チキンカツカレーが人気。

成田発アブダビ行きの1食目は、肉・魚・ベジタリアンの3択。下写真は1食目で人気の「チキンカツカレー」。ほどよくスパイスが効いたカレーは、ルーも自家製です。カレーはアラブ諸国でもよく食されますが、チキンカツをのせたこのカレーはどこか和風で、とろりとした濃度があり、ボリューム満点。2食目には「焼きそば」や「チキンカツ丼」など男性に人気の和食が出ます。

Photo:Sakiko Adachi(CROSSOVER)

<キャセイパシフィック航空>メインのチョイスには和食も!デザートは人気のハーゲンダッツ

日本-香港線では、すべての搭乗クラスでハーゲンダッツのアイスクリームが楽しめます(朝食便を除く)。下写真は成田-香港線の機内食の一例で、まろやかなパプリカ風味の牛肉の煮込み「ビーフグーラッシュ」にバターソースを添えたもの。2種あるメインはひとつが和食、もうひとつは中華と洋食のチョイスが1カ月おきに入れ替わるという仕組みです。

こちらの記事は、2019年 07月15日号「エアライン最新案内。2019」からの抜粋です。