ここまで来たジーンズ開発の最前線! LAにあるユニクロのラボに潜入。

  • 写真:岡村昌宏(CROSSOVER)
  • 文:高橋一史

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加工マシンの中でレーザーを照射され表面から炎が立ち上る、ユニクロのサンプルジーンズ。

その光景はまさしく衝撃だった。マシンのスイッチが入れられると、置かれたジーンズの上から突然、炎が立ち上った。さらにその炎は、あたかも刺繍ミシンのように小刻みに表面を移動しているのだ。わずか15秒ほどの時間が過ぎマシンが停止すると、そこに横たわるのは、一部が茶色く焼けたジーンズだった。手に取ると、さらに驚きが待っていた。焦げたのはデニム生地のタテ糸だけで、ヨコ糸はまったく干渉されていない。指でほぐすと、長年、穿き込んで穴の開いたようなジーンズの表情が見えてきた。

ユニクロを展開するファーストリテイリングが、ジーンズを自社で製品開発する施設を米カリフォルニア州ロサンゼルスに設立したのは、2016年のこと。グローバルブランドの名にふさわしく、ニッポンを飛び出して世界中のデニム情報が集結するこの土地に、「ジーンズイノベーションセンター(JIC)」をつくったのだ。19世紀に誕生したジーンズの歴史は長いが、「LifeWear」を掲げるユニクロにとっては、さらなるクオリティの向上を追求するために注力している重要なアイテム。JICを訪れ、そこに並ぶマシンを見ていくと、彼らが目指しているミッションの数々が浮かび上がってきた。

茶色く焼けた生地をほぐすと、ヨコ糸が出てくる。この後、洗い加工すると色も白くなり、よりリアルなダメージの風合いに。

レーザーを照射して色の濃淡を付ける、ハイテクマシンのデモンストレーション。

レーザー加工により色落ちが施された商品のひとつ。「スリムフィットジーンズ」¥4,389(税込)/ユニクロ  PHOTO:加藤佳男

そのミッションとはまず、未来へつながるサステイナブルなモノづくりを行うこと。さらに、職人が一本一本、手仕事していた加工をハイテクマシンで行い、高い品質を保ちながら安定して商品を供給していけるシステムづくりも目標だ。JICに設置されたマシンは、その大半がデニムの色落ちや味出し加工用。前述した炎の上がるダメージ加工はそのひとつで、他にはレーザーを照射して表面の染色を焼き飛ばし、リアルな “ヒゲ(アタリ)” をつくるマシンもある。

加工をマシンで行えば、水の使用量を少なくして資源の無駄遣いをなくし、環境汚染も減らせるジーンズづくりが可能になる。ナノバブルやオゾンで洗う技術も取り入れながら、ユニクロの「レギュラーフィットジーンズ」では18年に、従来品と比べ加工工程で最大99%、平均90%以上の水の削減を達成。こうして、JICにあるのと同様のマシンがファーストリテイリングの提携工場に導入され、現在では次々とサステイナビリティに配慮されたジーンズが店頭に並んでいく。職人技に左右されないシステムだから、プログラムの調整次第で、どの製品でもほぼ同じ加工ができる。デザイン性の高いジーンズの安定供給にもつながり、一挙両得なのだ。

高品質かつ低価格で、“持続可能な” 生産体制の実現。ファーストリテイリングはこの難しい課題のクリアに挑み、ファッションメーカーのあるべきひとつの姿に歩みを進めている。

ジーンズイノベーションセンターのメインフロア。デニムの粉が飛び散らず、従業員の健康も守られる清潔な施設だ。

問い合わせ先/ユニクロ

www.uniqlo.com

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