いま地球のためになにができるか、人気ファッションブランドの最新サステイナブル事情。<前編>

  • 写真:青木和也
  • 文:行方 淳

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いまファッションに求められる、サステイナビリティ。人気のブランドは、どのようにアイテムに落とし込んでいるのか。最新事情を追った。


ヘルノ──素材と染色で、環境負荷を軽減。

使い勝手のいいハーフ丈のコート。ラインアップは全5色だ。各¥107,800(税込)/すべてヘルノ(ヘルノ・ジャパン TEL:03-6427-3424)

今後のコレクションを、エコサステイナブル基準を満たすアウターで構成することを目指すヘルノ。その第一弾としてのプロジェクトが、この春夏に誕生したヘルノ「グローブ」だ。いちばんのポイントはリサイクルナイロンのファブリックを使用しているという点だが、こだわりはそれだけじゃない。素材だけでなく染色も植物由来。天然色素配合率50%で、環境負荷の軽減に配慮されている。内側にそれぞれの染色の原料がグラフィックで描かれているのもユニーク。身に着ける方も、こういった証明が明確にあると、環境問題に参加できている実感がわき、どこか有意義な気持ちになる。


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素材を共有したのは日本の化学素材メーカーである小松マテーレ。機能性も追求されており、もちろん撥水性も備えている。染色のベースはすべて玉ねぎの皮で、パープルならぶどう、グレーは竹炭、グリーンはオリーブ、ネイビーはインディゴが使用されている。

ジェイエムウエストン ──ヴィンテージの再生プロジェクト

ユーズドのシューズを蘇らせたとは思えないほどの美しいコンディション。上から、¥66,000(税込)、¥55,000(税込)/ともにジェイエムウエストン(ジェイエムウエストン 青山店 TEL:03-6805-1691)

今年1月にジェイエムウエストンが発表した「ウエストン・ヴィンテージ」が話題だ。これは、役目を終えた同ブランドのシューズを回収し、修理・修復。新品のように蘇らせるというブランド初となるサステイナブルな取り組みのことだ。そもそもリペアやメンテナンスしながら大切に長く履き続けることを前提としたジェイエムウエストンのシューズ。これまでも、修理工房では年間約10,000足のシューズの再生に取り組んできており、その数はフランス国内トップクラス。そのフィロソフィーを次なるステージへと引き上げた格好だ。本国では先行して販売が開始されているが、青山店では4月中旬から。本プロジェクト始動を記念した特別なデザインも展開予定。それも見逃せない。

ディレクターのオリヴィエ・サイヤールがデザインした、特別なモデルもラインアップ。すべてヴィンテージから再生したもの。各¥154,000(税込)/すべてジェイエムウエストン(ジェイエムウエストン 青山店)

オール ブルース──ジュエリーも、再生素材の時代。

ミニマルなデザインが特徴。時代を超えて愛されるスタイルをつくり出している。ネックレス¥51,700、ゴールドリング¥51,700、シルバーリング¥35,200(すべて税込)/すべてオール ブルース(エドストローム オフィス TEL:03-6427-5901)

供給過多で既に飽和状態のマーケット。不要となってしまったものに価値を付加し、新しいクリエイションを生み出す。そんな再資源化の理念をもともともち合わせているオール ブルースでは、再生されたスターリングシルバー、または18カラットのゴールドを用いて、ジュエリーが制作されている。ラグジュアリーな宝飾マーケットはリサイクルという概念に対して保守的だ。これはそんな業界に対しての挑戦ともいえる取り組みとなる。

無印良品──まだ着られるから、「ReMUJI」

日本の藍色にはさまざまなニュアンスがあるが、今回はその中から「縹(はなだ)」「藍(あい)」「留紺(とまりこん)」の3色を採用。色落ちしない現代の技法を用いている。アイテムごとに違うその微妙な色みの違いを感じ取ってほしい。各¥2,990(税込)/すべて無印良品(無印良品 銀座 TEL:03-3538-1311)※こちらのアイテムは一例です。

ユーザーが長年愛用してきた服を回収し、資源としてエネルギーに変えていく取り組みにかねてから参加している無印良品。中にはまだまだ着られる服があることを気にかけていた同ブランドは、2015年からそれをリユースするプロジェクトをスタート。それが「ReMUJI」だ。プロセスはシンプル。回収した服を藍色に染め直し、また着られる服へと蘇らせる。日本には古くから布を染め直して再利用する文化があることにヒントを得た。既に多くのアイテムがこの工程を経て再び店頭に並んでいる。ちなみに、リユースできないアイテムはエネルギーとして再生するなど、無駄がない。ひと手間かけるだけで価値あるものに変わる。その発想が、素晴らしい。

1.まずはユーザーから使い終わった衣類を回収。まだ着られるものを仕分けする。クリーニングして汚れを取り除いた後、藍色に染まりやすいよう、あらかじめ洗いをかけておく。

2.仕上がりの色に応じて微調整しながら藍色の染料を調合。ムラにならないよう、染料と助剤を何回かに分けて投入する。ていねいな工程を経ているからこそ、質のいいアイテムに仕上がる。

3.染め上がったものを色ごとに分けて乾燥機にかける。上の写真と見比べてみてもわかる通り、仕上がりはまったく新しいアイテムといっていいほど。布を最後まで使い切る日本の知恵の賜物だ。

4.最後は素材の風合いを活かしてやさしくプレス。一つひとつ人の手で検査が施され出荷される。この仕上げ作業でもクオリティは左右されるため、最後までていねいにつくられている。

こちらの記事は、2020年 03月15日号 Pen「TOKYO STYLE 2020」特集からの抜粋です