ブルックス ブラザーズだけじゃない、 アメリカ大統領が愛した「5つのブ...

ブルックス ブラザーズだけじゃない、 アメリカ大統領が愛した「5つのブランド」とは。

文:小暮昌弘

第16代のアメリカ大統領であるエイブラハム・リンカーン。1865年に暗殺されていた時に着用していたフロックコートがブルックス ブラザーズ製。内側に見事な刺しゅうが施されたフロックコートであった。

2020年11月に行われた激戦と混乱のアメリカ大統領選挙は、12月14日の選挙人による投票で、民主党のジョー・バイデン前副大統領が過半数を上回る選挙人を獲得し、2021年1月20日に大統領に就任することが確定した。就任式が行われると、バイデン新大統領がどこのブランドの服を着たか、どこかのメディアが取り上げるに違いない。


1.ほぼすべての大統領が着用する、老舗「ブルックス ブラザーズ」

ではこれまでの大統領たちはどんなブランドの服を愛用してきたのだろうか? スーツやコート、シャツやネクタイなど、大統領のドレスクロージングで圧倒的な着用率を誇るのが、今年、創業203周年を迎えるブルックス ブラザーズである。ヘンリー・サンズ・ブルックスによって1818年に創業されたアメリカ屈指の歴史をもつブランドで、ポロカラーシャツ(ボタンダウンシャツ)やナンバーワン・サックスーツなど、アメリカントラッドを象徴するアイテムを次々と生み出してきた老舗中の老舗。誰もがよく知る大統領、エイブラハム・リンカーン(第16代)は2期目の就任式にあたって同ブランドでフロックコートを誂え、1865年にフォード劇場で凶弾に倒れた時にもこのコートを着ていたという。リンカーン以外にも多くの大統領がこの老舗の服を愛用しており、なんとトランプ大統領まで45人のアメリカ大統領のうち、40人がブルックス ブラザーズのドレスクロージングを愛用していたと聞く。ではこの老舗を着なかった5人の大統領は誰だったのだろうか? この少し意地悪な質問をブルックス ブラザーズのブランドアンバサダー、大平洋一さんにぶつけてみた。

「まずはブルックス ブラザーズが創業される前の大統領3名は着ていません。ジョージ・ワシントン(初代)、ジョン・アダムズ(第2代)、トーマス・ジェファーソン(第3代)です。あとの2名は、ジミー・カーター(第39代)とロナルド・レーガン(第40代)。レーガンはもともと俳優でしたので、お抱えのテーラーがいたらしく、一方で倹約家であったカーターはブルックス ブラザーズの服は選ばなかったと聞いています」と大平さんは話す。

創業前の大統領が同ブランドを着ていないのは理解できるが、創業後は第38代のジェラルド・フォードまでの大統領は全員、ブルックス ブラザーズを着ていたことになる。トランプ大統領はイタリア製のスーツを愛用していたと聞くが、それでも就任式のコートはブルックス ブラザーズのもの。その就任式に立ち会ったバラク・オバマ(第44代)も同ブランドのコートを着用している。まさにブルックス ブラザーズは大統領のユニフォーム=制服とも言える。それにしてもすごい着用率。アメリカ最古の服飾店だけのことはある。


2.ハンドメイドでスーツを仕立てるオックスフォード・クローズ

大統領が着たアメリカ生まれのスーツはほかにもある。そのひとつが1916年にシカゴで創業されたオックスフォード・クローズ(Oxxford Clothes)。創業以来、100%ハンドメイドでスーツ類を仕立てるアメリカでは稀有なブランド。2007年にシカゴの工場を取材したが、ボタンホールやボタンを付けるのもすべてハンドメイドで、ミシンは数台しかなかった。翌年ニューヨークで社長に会ったときにはそのミシンも捨てたと話していた。セレブから政治家や経営者など、富裕層の顧客を多くもつが、ジョージ・W・ブッシュ(第43代)が就任式用に注文したのがこのブランドのスーツだ。同社の社長から「歴代大統領のスーツを仕立てている」と聞いた覚えがあるので、ほかの大統領の服も仕立てたのだろう。

1940年代にチェコスロバキア(現在のスロバキア)からアメリカに渡ってきたマーティン・グリーンフィールド。ブルックリンで100人以上の従業員が働くドレスウエア専門の工場を経営する。自社ブランド以外にもアメリカの有名ブランドのスーツ類を縫製している。©Alamy/amanaimages

3.ブルックリンに自社工場をもつマーティングリーンフィールド

またマンハッタンの対岸、ブルックリンの老舗スーツブランドのマーティングリーンフィールド(Martin Greenfield)も大統領のスーツを仕立てた実績をもつ。1977年に創業されたブランドで、いまでもブルックリンに自社工場を持ち、自社製品以外にもアメリカの有名ブランドのスーツを仕立てる。比較的新しく設立されたブランドなので、顧客にはオバマやクリントンなど、最近の大統領の名前が並ぶ。オックスフォード・クローズ、マーティングリーンフィールドともに日本ではよほどのファッション通しか知らないブランドだが、アメリカでは大統領が選ぶブランドとして、その地位も知名度も高い。

ニューヨークなど、アメリカの大きな都市にはジョンストン&マーフィのショップがある。歴代の大統領が同ブランドの靴を履いているのを耳にして買いにくる人もいるのだろう。©Alamy/amanaimages

4.リンカーンからカーターまで愛用した、ジョンストン&マーフィ

次が大統領の足元を固める革靴の話だ。ブルックス ブラザーズ製のフロックコートを着たリンカーンが履いていたのが、ジョンストン&マーフィ(Johnston & Murphy)のブーツだ。1850年にイギリスからアメリカに移り住んだ靴職人、ウィリアム・ダドレーがニュージャージーで創業したブランドで、創業した年に早くもミラード・フィルモア(第13代)のために靴を製作して以降、カーターまでの大統領に愛用されたという。


5.就任式で履く定番ブランド、アレン・エドモンズ

同じように大統領が就任式などの重要なイベントで履いていたのが、アレン・エドモンズ(Allen Edmonds)。ウィスコンシン州で1922年に創業された老舗で、5つの工場を構え、212の工程を経て製作される“純アメリカ製”の靴だ。履き心地のよさから政治家だけでなく、アメリカのビジネスマンに圧倒的な人気を誇る。このブランドもジョン・F・ケネディ、ロナルド・レーガン、ジョージ・W・ブッシュ、ビル・クリントン、バラク・オバマまで、実に多くの大統領に愛用された。オバマは就任式でアレン・エドモンズを履かなかったことがアメリカで大きな話題になったそうだが、いまでは同ブランドの革靴の大ファンになったという話まで伝え聞く。

いずれにしても衆人環視の中で毎日を送る大統領は、スーツにしても靴にしてもアメリカのブランド、あるいはアメリカ製のアイテムを身に着ける伝統、あるいは習慣があるのだろう。経歴やキャリアによってスーツのブランドなどがある程度決まっているのが、政治やビジネスで活躍するアメリカのエスタブリッシュメント、あるいはエリートたちの習わしだ。大統領の場合はそこに“アメリカ”という要素が加わることになる。ある意味、大統領としてのマナー、あるいはエチケットとしてアメリカンブランドの服や革靴を身に着けているのではないだろうか。

アレン・エドモンズの靴を試着するバラク・オバマ。アレン・エドモンズの靴は、歴代の大統領だけでなくハリウッドスターにも人気。ジョージ・クルーニー、レオナルド・ディカプリオ、マイケル・ダグラスなどが愛用。©ZUMA Press/amanaimages

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