ファッション史にも名を残す、ドワイト・アイゼンハワー元...

ファッション史にも名を残す、ドワイト・アイゼンハワー元米大統領が愛用した万年筆。

文:小暮昌弘(LOST & FOUND) 写真:宇田川 淳 スタイリング:井藤成一
イラスト:Naoki Shoji

『政治家の条件』(岩波新書)で、経済学者の森嶋道夫は「政治の指導者には、燃えるような信念とともに冷静な現実感覚が求められる」と書く。では、歴史に名を留める政治家たちは“モノ”に対してどんな視点をもち、なにを求めたのだろうか? 今回は、古今東西のリーダーたちが愛した名品を追う。

モデル名は「パーカー51」。上がプレミアムラインの「プレミアム プラムGT」。ボディには歴代のカラーから厳選されたブラックとプラムカラーの2本が揃う。クリップから天冠にいたるまで、ゴールドで統一。¥36,300(税込)。下がコアラインの「ティールブルーC T」。クリップなどのメタルパーツにシルバーカラーを採用したモデル。¥13,200(税込)/すべてパーカー

テキサス州出身で、高校時代から「アイク」の愛称で親しまれたドワイト・D・アイゼンハワー。陸軍士官学校を卒業後、軍人としてノルマンディー上陸作戦を指揮し、第二次世界大戦終戦後の1952年に大統領選挙で共和党から指名され、第34代アメリカ大統領に就任した人物だ。

身だしなみに気を配っていた人らしく、軍人時代、指定された制服が気に入らず、新しいジャケットを製作させたというエピソードもあるほど。彼がデザインを指揮したジャケットは、短めの着丈で2つの大きな胸ポケット、幅広のウエストバンドが特徴。いまでもそのジャケットは彼の愛称から「アイク・ジャケット」と呼ばれ、多くの人に着用され続けている。ファッション史にもその名を残す、珍しい大統領と言える。

そんなお洒落なアイゼンハワーが連合軍最高司令官時代、第二次世界大戦終結の際にドイツの降伏文書の署名に使った歴史的な万年筆がある。「パーカー51」だ。

パーカーは1888年、アメリカのウィスコンシン州でジョージ・サッフォード・パーカーが創業したブランドだ。「優れたペンをつくり上げる」という信念のもとに革新的なインク供給システムをもつ「ラッキー・カーブ・ペン」を発売。その後も高い機能性と高いクラフトマンシップをもった名品を生み出してきた、筆記具の名門だ。

アイゼンハワーが愛用した「パーカー51」は1941年に誕生した同ブランドの歴史的な名作で、創業51年を記念して開発に着手されたモデル。ペン先と一体化した独特の流線形のシルエット、ヴィンテージ感が漂う絶妙なカラーリング、のびやかな書き心地で多くの人から支持を受けた。当時、このペンをデザインしたケネス・パーカーは、戦闘機の空力特性からインスパイアを受けたと語っているが、「宇宙から来たペン」とも評され、「ファッション・アカデミーアワード デザイン賞」を受賞した20世紀を代表するペンのひとつだ。アイゼンハワー以外にも、アーネスト・ヘミングウェイや三島由紀夫といった文豪たちに愛用されたことでも広く知られている。

実はこの名品の特長を受け継ぎながら、最新技術でモダンに進化した最新版の「パーカー51」が、2021年2月から発売される。パーカーファン、万年筆マニアならずとも触手が動くニュースではないか。

ブランドを象徴する「矢羽クリップ」。1930年代の著名デザイナー、ジョセフ・プラットによって生まれた秀逸なデザイン。

1987年の米ソ中距離核戦略全廃条約の際にミハイル・ゴルバチョフソ連書記長が使った「パーカー75」も有名。これはその後継モデルの「ソネット プレミアム シズレGT」で、高級感が漂う名品だ。¥55,000(税込)/パーカー

問い合わせ先/ニューウェルブランズ・ジャパン TEL:‪0120-673-152
http://www.parkerpen.com

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