初のワールドチャンピオンを記念して贈られた、グリュエン...

初のワールドチャンピオンを記念して贈られた、グリュエンの時計【ベーブ・ルース編】

文:小暮昌弘(LOST & FOUND) 写真:宇田川 淳 スタイリング:井藤成一

モデル名は「カーベックス バットウィング 」。ドライバーズウォッチとしてカテゴライズされるモデル。運転しながら時間がわかるよう、腕の側面に装着しても可動式のラグによってフィットする。ケースは10金イエローゴールドフィルド。キャリバーは「440」。ケースサイズは縦45×横21mm。¥198,000(税込)/グリュエン

“野球の神様”ベーブ・ルースのメジャーリーガーとしてのキャリアはボストン・レッドソックスというチームで始まった。ルースはすぐに投打で大活躍し、1919年にはオーナーに年棒2万ドルを要求する。支払いに困ったオーナーは、ルースを当時弱小球団だったヤンキースに10万ドルのトレードマネーと引き換えに売り払ってしまう。

ヤンキースに移籍したルースは打撃に専念し、ホームランを量産。その人気は全米に広がり、どこの球場でも超満員を記録し、球団の収入もうなぎのぼりで増えた。そして1923年、ヤンキースはついに自前のスタジアムが持てるまでに。ヤンキー・スタジアムが、別名「ベーブ・ルースが建てた家」と呼ばれるのはそのため。さらに同じ年に、ヤンキースは球団創設以来初のワールドチャンピオンに輝くが、この記念としてルースに贈られた時計がある。14Kで、5角形のデザインの懐中時計。裏面にはチャンピオンを獲得した年号や選手の名前が刻まれ、もちろんルースの名前も刻印されている。ブランド名はグリュエン。アメリカのウォッチメーカーで、この時計はルースの生前に友人に贈られた後、長い間所在がわかっていなかったが、2014年にニューヨークでオークションにかけられた。

グリュエンの創業は1874年。ドイツ生まれのデイトリッヒ・グリュエンがアメリカのオハイオ州で時計工房を開いたのが始まりだ。ムーブメントはスイス製で、ケースの製造はアメリカで行われた。販売されていたのも主にアメリカだ。

ルースに贈られたのは懐中時計だったが、このブランドが全盛期を迎えるのは、1935年にケース自体がカーブして腕にフィットする「カーベックス」という腕時計を発売してから。今回紹介するのも「カーベックス」だが、シリーズのなかでも異色の「バッドウィング」というモデルだ。可動ラグがコウモリの羽のように見えることからこの名前が付いているが、これがデザイン的にも大きなポイントになっている。この時計は1940年代で製造されたもので、現在の時計にはないクラシックさが際立つ。もうブランドとしては消滅しているが、アンティーク市場ではグリュエンだけを集める時計ファンもいるほど人気が高い。ベーブ・ルースと同じく、アメリカの黄金時代を感じさせる名品と断言できる。

ラグがこんなにも動くので、腕の側面に着けたときでもフィットする。アール・デコ風なデザインも洒落ている。

文字盤はホワイト。ブランド名とともに、「カーベックス(CURVEX)」のモデル名が入っている。下に付いたスモールセコンドもクラシック。

元々このモデル用ではなかったが、グリュエンの赤いボックスも付属している。

問い合わせ先/キュリオス キュリオ TEL:03-6712-6933
https://curious-curio.jp/

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