一番いいものだけを求めた、ウィンストン・チャーチルのダ...

一番いいものだけを求めた、ウィンストン・チャーチルのダンディな着こなし。

文:小暮 昌弘 写真:宇田川 淳 スタイリング:井藤 成一
イラスト:Naoki Shoji

第3回 グローブ・トロッターのアタッシェ

1940年5月30日、西部戦線を席巻したヒットラー率いるドイツ軍が英国に迫る中、サー・ウィンストン・チャーチルは英国の首相に就任する。首相就任演説では、「私には血と労苦と涙と汗しか提供できるものがない。しかし神が我々に与える限りの力を尽くして戦争を戦うことができる」と彼は高らかに宣言し、ドイツに傾きつつあった戦況をひっくり返し、英国を勝利に導いた。
政治家として優れた人物であったことは明らかだが、同時に彼は洒落者=ダンディとしても知られていた。身に着けるスーツは背広の故郷、ロンドンのサヴィル・ロウで仕立てたビスポークスーツ。ドレスシャツももちろんビスポークだが、ヒットラーからの空襲で、防空壕に入るために同じシャツ店で「サイレンスーツ」と呼ばれる“つなぎ”を誂えた。
朝からウィスキーを嗜み、いつも手には葉巻が手放さなかったが、その葉巻もロンドンのセント・ジェームスかジャーミン・ストリートの店で仕入れたもので、空襲に遭った時、とある店から「首相の葉巻はご無事です」と連絡が入った話は有名。いまでもロンドンの名店を訪ね回ると、チャーチルの足跡が多く残っている。今回は英国のウィンストン・チャーチルが愛用した名品を紹介しよう。

創業当時から続くオリジナルコレクションの「スリムアタッシェケース(16インチ)」。「グローブ・トロッター」らしいスクエアなフォルムで、1897年の創業以来、デザインはほとんど変わっていない。素材は「ヴァルカン・ファイバー」で軽くて丈夫。ネイビーの色も美しい光沢を放つ。(W41×H35×D12cm)¥145,200(税込)/グローブ・トロッター

ウィンストン・チャーチルが首相官邸のある、ダウニング街10番地と思われる建物から出てくる時に撮られた有名な写真がある。サヴィルロウ仕立てのスーツの上にウールのオーバーコート、頭に被るのはシルクハット。そしてステッキとともに手にしていたのが、「グローブ・トロッター」のアタッシェケースだった。名演説で知られ、後にノーベル文学賞まで受賞したチャーチル。そのカバンに演説や作品の草稿原稿がたくさん入れられていたのだろう。そう思うと、歴史を感じ、魅力が増す。
「グローブ・トロッター」は、1897年に英国人のデヴィッド・ネルケンによって創業されたラグジュアリーラゲージブランドだ。いまでもロンドンに近いブロックスボーンという街で、ヴィクトリア朝時代から使われる機械を使って職人が一つひとつていねいにつくり続けている。
最大の特徴は「ヴァルカン・ファイバー」という素材。1850年代に英国で発明された素材で、当時としては革新的な素材だった。特殊紙を何層にも重ねて樹脂をコーティングしたもので、旅行カバンに使われる素材の主流が革だった当時、アルミよりも軽く、革よりも丈夫で、人気を博した。その堅牢さは象が乗っても壊れないと言われ、実際に1トンの象をカバンに乗せる実験が行われ、一挙に知名度が高まった。
また、革のように使い込むほどに味わいを増すというのも「グローブ・トロッター」の特徴である。チャーチルが愛用したカバンはどんなエイジング=経年変化を見せたのだろうか。

なかのつくりも外側のデザイン同様、極めてシンプルだが、着脱可能な書類入れが付いており、A4サイズの書類がたくさん入る。軽量なので、ビジネスシーンにも最適なモデル。

側面にはブランド名が控えめに刻印されている。「GLOBE-TROTTER(グローブ・トロッター)」というブランド名は、「世界を闊歩する者」という意味。

「ヴァルカン・ファイバー」が使われたケースのコーナー。クラシックな雰囲気が感じられる。鍵まで付いているので、チャーチルのように重要な書類を持ち運ぶのに向いている。

問い合わせ先/グローブ・トロッター 銀座 TEL:03-6161-1897

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