いつの時代も、ファッションの世界に新たな視点をもたらしてきたメゾンマルジェラ。シグネチャーとしてコレクションに散見する「白」や、白い4本のステッチに象徴されるように、普遍的なコードを解体・再解釈し、ファッションの見え方や捉え方を逆転させながら独自の哲学を築き上げてきた唯一無二の存在です。

先ごろ、バーニーズ　ニューヨーク六本木店で、改めてその最高峰のクリエーションを体感できるポップアップストアが始まりました。2019年春夏のパリメンズファッションウィークで発表された「アーティザナル」メンズコレクションをフィーチャーしたものです。このコレクションには、ケープのように羽織るピークドラペルのタキシードジャケットやヴィンテージの着物を解体して再構築したシャツ、パテントレザーを使ったバイカラーの「タビ」ブーツなど、多彩なアイテムがラインアップ。フォーマルとインフォーマル、オートクチュールとプレタポルテ、メンズとウイメンズなど、対称的な存在を同居させることで、従来までにあったドレスコードの固定観念や先入観を壊し、もっと自由な考え方を促しています。

クリエイティブディレクターのジョン・ガリアーノが「これらはクラフツマンシップに根ざしたもので、メンズドレスメイキングの最高峰なんだ」と語る通り、ごく少数だけ制作されたそれぞれのピースは、どれも圧倒的な存在感を放っています。さらに、メゾンマルジェラ本社での発表時と同じく、赤いビニールのファサードやパイプを組み上げて形づくられた高純度のインスタレーション。メゾンのクリエーションの頂点に位置するこの「アーティザナル」に触れたなら、きっとその奥深さを感じることでしょう。