初作を再び手がけた、マーガレット・ハウエル50周年の記念シャツ

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    NEWSな服&小物

    Vol.38写真:安達紗希子(CROSSOVER) 文:森下隆太

    初作を再び手がけた、マーガレット・ハウエル50周年の記念シャツ

    数量限定でリリースされるシャツは、デザイナーが最初に手がけたモデルがベース。袖を通さず飾っておきたくもなる逸品だ。レギュラーカラー、カラーレスと襟型の異なる計2型で、神南店とオンラインストアのみで2020年9月販売予定。

    服づくりにおいて、時代のムードを反映しつつ、ブランドの根幹を守り続けることは容易ではない。マーガレット・ハウエルが長らく支持を集めてきた理由は、そのさじ加減、その”さりげなさ”だろう。今回紹介するシャツには、50年分の技術と信念が詰まっている。

    デザイナーのマーガレット・ハウエルがその名を飛躍させることになったのは、あるアイテムとの出合いによる。1970年、まだ駆け出しの彼女がとあるバザー会場で手にしたのは、やわらかな風合いの生地に繊細なステッチワークが施されたビスポークシャツ。当時の英国では、華美なデザインや糊の効いたシャツが主流であり、質素で洗いざらした風合いのシャツには、誰も関心を示さなかった。しかし、それに魅了された彼女は、自宅のキッチンでシャツづくりを始める。糊を使わず、着心地を重視したシャツを発表すると、その実用性が受け入れられた。ビスポークの国で認められたカジュアルシャツは高く評価され、UK版ヴォーグには「英国の伝統を打ち破ったデザイナー」として迎えられた。肩肘張らずに着こなせるシャツは、業界にも大きな変化をもたらしたのだ。

    細かいピッチで縫われた、緻密なステッチワークはまさに圧巻。イギリス・エドモントンの自社工場にて、デザイナーの哲学を知り尽くした職人により、手作業で仕上げられている。高度な技術が求められるため、職人ひとりが1日に生産できるシャツはわずか数枚。

    カラーレスタイプの前身頃と後身頃のつなぎ目は、糸のほつれを防ぐためのガゼット仕様に。実用性を追求したディテールだが、ていねいな仕上げがエレガンスを醸す。

    それから50年の節目にリリースされるのは、彼女が最初にデザインした(業界に新風を吹き込んだ)シャツである。生地は、70年代からオーダーし続けている、スコットランドの老舗「デイビッド&ジョン・アンダーソン」のシーアイランドコットンを使用。光沢感や軽さ、肌触り、耐久性など、すべてにおいて最高品質。縫製は自社工場の熟練工によって再現。運針の細かさには目を見張るものがある。この一枚のシャツからは、ブランドが歩んできた道程の正しさと、今後も変わることはないという明確な意志が感じ取れる。

    オフィスのドレスコードが急激にカジュアル化している昨今、必要なのは実用性を備えた快適なデイリーウエアだ。そういった意味で、マーガレット・ハウエルのタイムレスなアイテムは、いまのムードとも親和性が高いだろう。

    ブランド50周年を記念して、マーガレット・ハウエルと映像作家エミリー・リチャードソンが手を組んだスペシャルムービーも作成された。デザインのあれこれを言葉にするのは難しいからと、これまた彼女らしい理由だ。半生を振り返るような内容で、ブランドの哲学や歴史がまとめられている。なにより、彼女の日常がちらちらと垣間見えるのがうれしい。こちらも併せてチェックしたい。

    家具や雑貨まで手がけるマーガレット・ハウエル。写真の椅子は彼女の熱意によって復刻された、英国の老舗家具メーカーであるアーコールのチェア。服と同様、デザインと実用を高次元で両立している。

    マーガレット・ハウエル「リミテッドエディション シャツ」
    【価格】¥64,900(税込)
    【素材】コットン
    【問い合わせ先】アングローバル
    TEL:03-5467-7864