リーにもあった大戦モデル! コレクター垂涎のジャケットとジーンズの復刻版が新登場。

  • 文:高橋一史

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フロントが1ポケットでプリーツも付いた初期型「101J」カウボーイジャケットと、バックポケットのシグネチャーステッチが省かれた「101」カウボーイパンツ。ともに大戦モデルの復刻版だ。ジャケット¥33,000(税込)、パンツ¥22,000(税込)

ヴィンテージデニムウエアは、20世紀の社会を雄弁に語る証人だ。常に大衆の生活とともにあり、その時代の空気を深く吸い込んで変化してきた。着る労働者の要求に応じて改良され、製造技術が進化すればディテールも生地も新しくなった。デニムウエアは工場でつくられる大量生産の“着る道具”だからこそ、家電や車と同様に時代ごとの比較がしやすい。ヴィンテージのコレクターは、デニムウエアを通してそれぞれの時代背景を感じている。

1930年代にはジャケットもパンツも、現代まで続く型がほぼ出揃っていた。縫製ステッチに凝り金属パーツもふんだんに使われていたが、これが劇的に動いたのが40年代である。自国が第2次世界大戦に参戦した翌年の42年に、アメリカは軍需産業に力を入れるため国内企業に物資の簡素化を命令。デニムウエアも必要最小限の機能をもつものへと対応を余儀なくされた。この時誕生したのがいわゆる「大戦モデル」だ。デニムウエアの歴史の中で、極めて特異なデザイン変更の事例である。

カウボーイに愛用者が多かったリーも例外でなく、ボタンもステッチ数も減らしたモデルを製造。ジャケットの背中のバックルベルトは外され、パンツはファスナーが軍に供給されたため入手できず、旧式のボタン開閉に戻った。今回リーのアーカイブシリーズから復刻された「WW Ⅱ」は、この頃のモデルをオリジナルに限りなく近いクオリティで再現したものだ。製品洗いする前の糊がついたリジッドタイプのみが用意されている。当時のように防縮加工された生地だが洗濯でやや縮み、ねじれも生じるのは、まさしくヴィンテージの味わいだ。

当時は仕方なくシンプルにアレンジしたこれらの服が、80年が過ぎた現代人の目で眺めると考え抜かれたミニマルデザインに思えるから面白い。いまファッションとして着るなら、戦前・戦後のモデルより洗練された装いができそうだ。誕生した頃の世界に思いを馳せたい人も、デニムウエアに新鮮な魅力を感じる人も、手に入れて損のない逸品である。


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バックポケットの補強がX型のステッチなのは(記事冒頭の写真参照)、馬に乗る時に鞍を傷つけないリー独自の工夫だが、フロントポケットはリベットで補強されている。

ドーナツボタンは汎用の月桂樹タイプになり、ほかのボタンは無刻印に簡略化された。ポケットではコインポケットのリベットは省かれ、メインポケットは本来の銅や真鍮の代わりに鉄製の丸い「UFO」リベットになった。

クラシックデニムの特徴である生地耳。旧式の機械で幅の狭い生地しか織れなかった時代に、ほつれない生地端(耳)をそのまま製品に使ったものであり、効率のいい裁断と縫製のための工夫だった。

裾幅を狭めるバックル付きベルトが外され、プリーツの縫い止めリベットだけが残されたジャケットの背中。縫製仕様も頑丈な3本針から2本針に変更され、一般的な衣料品の印象に近づいた。

ポケットフラップは縫いやすい丸い形状で、リベットは現代のリーのデニムウエアにも通じる、先端がカットされた銅製のブランドネーム刻印入り。

ジャケットのフロントにも生地耳が。運動量を確保するためのプリーツは、リーを代表するジグザグステッチ入りのジャケットには採用されなかった旧タイプのディテールだ。

●リー・ジャパン

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