ヴィンテージコートを新品で手に入れる !? 表参道の名店が仕掛ける、目からウロコの新発想オーダーメイド

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    構成、文:高橋一史
    写真:宇田川 淳

    Vol.38 ヴィンテージコートを新品で手に入れる !? 表参道の名店が仕掛ける、目からウロコの新発想オーダーメイド

    L'ECHOPPE

    服をオーダーする贅沢は、男の永遠の憧れ。日頃はイマドキな着こなしを愉しんでいても、趣味嗜好を一着の中に込められて、体型にフィットする注文服への興味は尽きません。ただし高級な注文服はそのほとんどが、ドレスアップするエレガンス発想に根ざしています。服装のカジュアル化が進み、味わい深い服に人気が集まる世の流れに即した注文服は、あまり存在しません。

    そんな折に、東京・表参道でデザイナーズから古着までを取り揃え、スタイリスト御用達としても知られるセレクトショップ「レショップ」が、ユニークな試みを打ち出しました。この店が “究極” と考える一着のヴィンテージコートを再現して、オーダーメイドでのみ提供する特別なプロジェクトです。もとになったヴィンテージ(次ページに掲載)は、イギリスを代表する一流コートブランドの珍しいフランス製。裏地に表地と同じ生地を使った、「無双仕立て」と呼ばれる貫禄のあるつくりです。過去に個人の注文主のために仕立てられたこのコートは、身幅がゆったりで、袖幅も広め。リラックスしたシルエットは古い時代のメンズコートの標準であり、かつ現代のファッションの潮流にも即したものです。

    上の写真は、定番素材のコットンギャバジンを用いたサンプル。この佇まいを見ただけでほしくなる人も多いでしょう。 既製服を販売しない理由は、「もとのコートがつくられた当時のスピリットも現代に蘇らせたかったから」。スタイルの提案力が都内屈指、との呼び声が高いレショップならではの発想です。次ページで、注文方法や選べる生地などを詳しくご紹介します。

    ハイセンスな仕立て職人との出会いが、このプロジェクトの鍵。

    オーダーするコートの裏面は、キュプラなどの一般的な裏地用生地ではなく、表地が使われます。上の写真のように表面と同じ色を選んだり、別の生地にするのもOK。用意された生地はどれも高級な品ですから、滑りのよさや身体への馴染みも問題ありません。

    黒ウール生地で仕立てられたサンプル。色と素材が異なると、ガラッと表情が変わります。ウエストベルトは写真のようにサイドポケットの中に入れたり、フロントのボタンを開けてベルトだけで前を閉じても、現代的なスタイリングになります。

    これが、ベースになったヴィンテージコートです。時を経てクタッとした味わいが生まれています。生地はコットンギャバジン、ラグラン袖でフロントは比翼仕立て。レインコートとしての機能性が考慮された、ミニマルシックな一着です。

    「レショップ 青山店」で開催された、期間限定オーダーイベントの様子。机に向かって黙々と縫い続けているのが、仕立て職人の平 剛さん。自身のブランド、「ラ ファーヴォラ(la favola)」も手がけています。高度な技術を持ちながら、ワークウェアの味わいも知り尽くす、硬軟を持ち合わせた人物です。朗らかなお人柄で、客との会話も弾みます。

    平さんが用意した生地見本。高級生地を紙の台紙にピンで留めた、飾りっ気のないサンプルです。コートの表面と裏面に使う生地を、これらの中から客が選んでいきます。他にもイギリスの老舗生地メーカー、「スタンドイーブン」らの仕立て用生地も取り揃えられています。

    ボタンホール用に使われる、こだわりの縫製糸の数々。イタリアのシルク糸が主に用いられます。

    コートをオーダーするにはまず、レショップ 青山店を訪れるか電話で、店に常駐していない平さんと打ち合わせする日程を相談します。当日はS〜XLの4サイズのサンプルの中から、ベースにする大きさを決めます。生地やボタンなどのパーツを選び、身体を採寸したのち、数カ月後の完成を気長に待つ、という流れです。
    カジュアルなムードの店ですから、ふだんの買い物のついでに気軽にサンプルを試着するのもいいでしょう。気に入ったらオーダーにチャレンジすればいいのです。ハイレベルな服でありながら親しみやすい、“古くて新しい” 逸品に、ぜひ袖を通してみてください。

    ※店内撮影:高橋一史

    ボタンの掛け心地を左右するボタンホールは、職人の手かがり。端の糸をキュッとしめ、わざと布をツレさせたのは、手仕事をアピールする職人のこだわり。オーダー価格は、¥259,200(税込)〜。納期は4カ月〜(おおよその目安)。
    問い合わせ先/レショップ 青山店
    TEL:03-5413-4714