ジュンヤ・ワタナベがデザインする「コム デ ギャルソン・オム」は、いますぐ着たいワードローブの宝庫です。

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    構成、文:高橋一史
    写真:宇田川 淳

    Vol.27 ジュンヤ・ワタナベがデザインする「コム デ ギャルソン・オム」は、いますぐ着たいワードローブの宝庫です。

    COMME des GARÇONS HOMME

    我が国のメンズスタイルの礎を築いたデザイナーズブランドの「コム デ ギャルソン・オム」(以下、オム)について、みなさんはどのような印象をお持ちでしょうか。黒をベースにしたモノトーン? ボックス型のたっぷりとしたスーツ? 真っ白なシャツにルーズな黒いパンツのコーディネート? 確かにそれらはオムの重要な構成要素であり、同ブランドが長年にわたり支持され続ける魅力の一端です。一方で、そのイメージにとらわれずに現在のコレクションを眺めると、また違った側面が見えてきます。さまざまな志向性の人が一様に洒落ていると感じる、理想的な日常着がここにあるのです。デザインに走りすぎず、でも決して平凡ではなく。〝普通でいて普通じゃない”  、絶妙な落とし込みが行われています。

    現在のオムのデザインを手がけているのは、「コム デ ギャルソン・ジュンヤ ワタナベ マン」(以下、ジュンヤ)の渡辺淳弥さんです。この事実はあまり知られていないかもしれません。オムは1978年に発足し、初期は川久保玲さんが手がけ、その後別のデザイナーが担当してきました。渡辺さんが行うようになったのは2004年春夏シーズンからです。方向性が大きく変わったのは2012-13年秋冬の時。ジュンヤがオーセンティックな服を解体して再構築する作風なのに対し、オムはその匂いを漂わせつつ、より定番的なワードローブの創造へと歩みを進めました。トラッド、ワーク、ミリタリー、アウトドアといった渡辺さんが得意とするエッセンスをふんだんに取り入れたブランドになったのです。

    最新の2018年春夏では、スポーティなアプローチが目につきます。まずここにご紹介するのは、色彩の美しい2着のシャツ。上の写真左のシャツは、ボディがブルーストライプのコットン生地で、フロントがカーキのナイロン生地です。トラッドとミリタリーが融合したハイブリッドなデザインで、品のよさとラギッドな味わいの両方をこれ一着で楽しめます。右のシャツのフロントは、カラフルな布がパッチワークされたもの。トップをこれ一枚でボトムをショートパンツにしてカジュアルに着てもいいですし、ジャケットやスーツのインナーとして、Vゾーンから色をチラ見せしても春の軽快な装いになります。

    次ページでは、アウター、スーツ、Tシャツ、小物をたっぷりとお届けしましょう。

    着て生活するリアリティから生まれたデザイン

    コム デ ギャルソン・オムには、デイリーユースに最適な機能性アウターも充実しています。上の写真右のマウンテンパーカの本体生地は、ラミネート撥水加工されたストライプのウール。各パーツのつなぎ目はシーリング加工され、水の浸入を防いでいます。スーツのように高品位な生地を用いるデザイナーズブランドならではの服に、スポーツウエアに匹敵する機能性をもたせた、死角なしの逸品です。ストライプのシャツ生地を裏地に配した、左のMA-1型のブルゾンも、コットン×ナイロンのウェザークロスで、実用性が重視されています。

    左から、ブルゾン ¥60,480(税込)、フード付きアウター ¥128,520(税込)/ともにコム デ ギャルソン・オム(コム デ ギャルソン TEL : 03-3486-7611)

    「コム デ ギャルソンといえばボーダー」と思い浮かぶ人も多いでしょう。上の写真左の長袖Tシャツは、裾がカラフルな別布で切り替えされています。裾にラインがあることで、パンツアウトで着ても、インした時にベルトを締めてアクセントにするのと同じような視覚効果が生まれます。全身のスタイリングにさりげなく動きを与えられるのです。右のグレーのTシャツは袖がマルチボーダーで、パンツによく用いられる色が並んでいます。デニム、チノ、カーゴなど身近なパンツとの色合わせが自由自在です。

    左から、横ストライプTシャツ ¥22,680(税込)、グレーTシャツ ¥16,200(税込)/ともにコム デ ギャルソン・オム(コム デ ギャルソン TEL : 03-3486-7611)

    セットアップで着られる上下です。コム デ ギャルソンのメンズが得意とする、製品の状態で洗い染めし、生じる縮みや歪みもデザインにする手法でつくられたアイコニックなアイテム。コットンと化繊を織り交ぜた生地が、身体に馴染むやわらかな風合いに仕上げられています。グラフィック面での大きな特徴は、ストライプのパンツが、同素材で切り替えされたジャケットの裾や袖先とつながって見えること。この視覚効果により、ウエスト位置が高く見え、下半身がすっきりとします。体型に恵まれない日本のオトコにもよく似合う組み合わせといえるでしょう。

    左から、ジャケット ¥81,000(税込)、 パンツ  ¥38,880(税込)/ともにコム デ ギャルソン・オム(コム デ ギャルソン TEL : 03-3486-7611)

    オムに限らず、コム デ ギャルソンのバッグやシューズの多くには、ヨーロッパのモードのような豪華さとは一線を画すカジュアルさがあります。その大半は合わせる服装を選ばないシンプルなものです。今季のオムがリリースした小物で注目なのは、コットンキャンバス生地のスニーカーとトートバッグ。いま気になるキャンバス生地に着目し、この素材にふさわしいスタンダードなアイテムを現代的にリ・デザイン。ワントーンで揃えられたクリーンな配色にも、従来のトラッドアイテムにはない新しい感性が込められています。

    左から、ハイカットスニーカー ¥24,840(税込)、ショルダーストラップつきトートバッグ  ¥22,680(税込)/ともにコム デ ギャルソン・オム(コム デ ギャルソン TEL : 03-3486-7611)


    今回の「着る/知る」では、既存のイメージとは別のコム デ ギャルソン・オムの一面にフォーカスしました。このブランドは直営店でも、取扱いのセレクトショップでもネット販売を行っていません。店頭でしか購入できない独自の姿勢を貫いています。入荷してすぐに売り切れる商品も多いようですから、気になるアイテムに出合いたいなら、春夏モノの立ち上がりの時に、近くの店に足を運びましょう!

    ブランド力を示す貫禄のロゴデザイン。
    上段写真左から、カーキフロントのシャツ ¥34,560(税込)、カラフルなフロントのシャツ ¥34,560(税込)/ともにコム デ ギャルソン・オム(コム デ ギャルソン TEL : 03-3486-7611)