前（写真左）と後ろ（写真右）とを並べた色違いの2枚のTシャツはともに、異素材を何種類も組み合わせた、今どきのモードT。たっぷりとしたカタチとグラフィカルな配色を見ただけでも、「着てみたい」と思わせるパワーがあります。でもそれだけでこの服を評価するのはまだ早い。実は素材に大きな秘密が隠されているのです。どこかって？答えは、面積の広い前身頃の生地。ここがなんと、あの今治製タオルなんです！

見た目でOK派もウンチク派も、皆が心を動かされること間違いナシのこのTシャツ。手掛けたのは、2016年にスタートした新鋭の「シング ファブリックス（THING FABRICS）」。愛媛県・今治市出身のベテランデザイナー、藤原昌浩さんが地元の工場とともに、海外に通用する服を生み出すべく立ち上げたブランドです。

この記事の中で、「今治タオル」でなく「今治製タオル」と表記していることにお気づきですか？シング ファブリックスの大半のアイテムは、今治タオルと名乗れる認可を受けています。1cm四方の布を水に浮かべて5秒以内に沈むことなどの厳しい検査基準をクリアしています。ですがここに掲載しているTシャツは、後ろ身頃が麻やカットソーなどの異素材。前身頃のみがパイル地（タオル地）ですから、製品の95％以上に今治タオルを使わないと名乗れない、今治タオル製品とは認定されていないのです。

難しい話が続きましたが……このパイル地が今治の一流工場で製造された高品位なものなのは間違いない事実。汗をかいたら思わず袖で顔を拭きたくなる、ふわふわの生地です。タウンユースはもちろん、体が濡れるビーチでのリゾート着としてもお役立ち！

テーラードジャケットも、素材がパイル地になるとこんなにリラックスした表情に。生地が薄手で、パッチポケットの形状がスクエアな視覚効果もあり、着るとすっきりとシャープ。この手の簡易ジャケットには珍しく、滑りがいい背裏つきです。このクオリティで税込み3万円を切るお手頃プライスなのも、さすが「シング ファブリックス」。旅行のとき着て行く服にもぴったりです。なにせ素材がタオルですから、脱いで丸めて枕にしたり、プールやビーチなら濡れた体を拭いちゃったりも（メーカー推奨用途ではありません！）。そう、これは “屋外で着られるバスローブ” なのです。

夏のマストアイテムである短パンが、パイル地をまとうと快適さが倍増です。 汗を素早く吸い、椅子に座ったときもベタつきません。クッション性も良好で、シワがつきにくいのもこの素材のメリット。シング ファブリックスの特徴の一つとして、クールなデザインセンスが挙げられます。短パンも黒、グレー、ネイビー、ベージュといった都会的な色味。ウエストのドローコードはマットなグログランテープ。海外のホテルリゾートもよく似合う上質な風合いです。

ブランドのロゴ刺繍も洒落てるフェイスタオル。プライスは他社製の今治タオルと変わりません。ハンドタオル、バスタオル、バスローブ、ブランケットなどもラインアップされ、どれも大人気。ブランドの開始から間もないにも関わらず、ファッションの某有名セレクトショップがVIP顧客への贈呈用に数百セットものタオルを購入したほどです。取扱い店は、「ビューティー＆ユース ユナイテッドアローズ」、「ビームス ライツ」をはじめ、「シボネ青山」、「アクタス」などのインテリアショップでも。デニムの「KURO」、コンセプトストアの「FreshService」、バッグの「F/CE」らの別注品もあり、それぞれの店頭やウェブサイトで販売されています。

「素材は”TIP TOP GOLD YARN”。この原綿となるスビンゴールドは、土壌の一番良い養分を吸収し育った綿花の1番・2番摘みのみを使用。世界三大生産国であるインドの年間生産量のわずか0.025％しか収穫できず、繊維1本1本の太さが細く繊維長が長い、まさに世界最高級の超長綿素材です」（メーカー説明より抜粋）
最後にお届けするのは、究極を目指して開発されたタオル。素材そのものも特別ですが、それを糸にしたプロセスにもこだわりが。柔らかさを出すため超甘撚りでつくった糸を、さらに捻り合わせ、高密度に織ることで、「ソフト＆タフ＆ラグジュアリー」なタオルを完成させたのです。ボックス入りで提供され、特別なギフトにも対応。肌に触れてみれば実感する、もはや別次元のふわっふわな逸品です。

このファッション連載「着る／知る」も第20回目を迎え、今回は我が日本から世界に発信される期待のブランドにフォーカスしました。これからも、有名無名に関わらず価値あるブランド、旬のアイテムやスタイル、ユニークなモノづくりをどんどんご紹介していきます！