ゆったり白無地Tシャツを極める! 選ぶ基準は落ちた肩、タイトなネック、厚手の生地。

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    vol.106

    ゆったり白無地Tシャツを極める! 選ぶ基準は落ちた肩、タイトなネック、厚手の生地。

    構成、文:高橋一史 写真:青木和也 | 

    ポケTを最大限にモダンに仕上げた、オーバーサイズTシャツ。¥17,600(税込)/オーラリー(TEL:03-6427-7141)

    永遠のスタンダードアイテムが、ときに大きくクローズアップされて街中で流行するのがメンズファッションの面白さだ。ただしファッション性が高いのは、現代的にアップデートされた新しい服のケースが大半である。タンスの奥から昔の服を引っ張り出して着ても、洒落て見せるのはなかなか難しい。いま大人気の白Tシャツも、そんな古くて新しいアイテムのひとつだ。かつて白Tシャツは生地がペラッと薄く、洗うとくったりして身体に馴染むチープ・シックなものが好まれた。しかしいまや白Tシャツはアウターと同等の価値をもつ。ゆったりとした服装の決め手として手を抜けない主役級アイテムになり、素材や仕立てに高級感が求められている。

    旬のデザインをチェックする基本ポイントはおもに3つ。1番目は、肩幅が広く肩線が落ちていること。ジャストの肩幅が最良とされるオーダーメイドのジャケットやシャツとは発想を切り替えよう。2番めのポイントは、ネックが詰まっていること。ゆったりを前提にデザインされたTシャツは、ルーズに着ても品性が保たれるように首周りがタイトだ。そして3番目は、厚手の生地であること。編み目を詰めた生地はハリが出る。肩の落ち感やビッグ感が強調されカタチが整いやすい。肌が透けないから着やすいのも大きなメリットである。

    ここでは白Tシャツに力を注ぐ3ブランドから、さらにセレクトしたものをご紹介。まず上下の写真は、上記のチェックポイントを全部クリアした一着である。カットソーが得意なオーラリーが、キャンバスのごとく分厚く固い質感を目指して試作を重ねて完成させた生地が使われている。編み糸が高級コットンなため、コシがありつつも風合いはソフト。ネックはギュッとタイトに詰まり、片や身幅や袖幅は大きく広がっている。夏にこれ一枚で過ごすのにぴったりな風通しのいいTシャツだ。

    生地の色はコットン本来の色を活かしたオフホワイト。リブネックはボディと編地が異なるためカジュアルな印象がある。

    150年以上の歴史をもつイギリスのアンダーウエアの老舗が手掛けたTシャツ。¥12,100(税込)/サンスペル(サンスペル 表参道店 TEL:03-3406-7377)

    イギリスのアンダーウエアの老舗として名高いサンスペルは白Tシャツのバリエーションが豊富だが、厚手生地でリラックスしたモダンなモデルがこれだ。身幅は広めだが袖は腕に添い、アームホールも狭め。品よくすっきりと着たい人にちょうどいいゆとり感である。生地は超長綿のスビンコットンとギザコットンを配合した高級なもの。地厚ながらしなやかでヌメりがありドレープが美しい。色の白さも際立つ大人向けの高品位な白Tシャツだ。

    モックネックに近い立ち上がりのある上品なネック。伸縮性のあるリブは繊細な細さで、ボディと自然に馴染んでいる。

    ネックがやや高めの設定でシームレス仕立ての、一見普通ながらこだわり抜いた一着。Tシャツ ¥9,350(税込)/キャプテン サンシャイン(キャプテンサンシャイン TEL:03-6277-2193)

    ヴィンテージをベースにした作風でファンを増やし続けるキャプテン サンシャインのTシャツは、絶妙なルーズさが売り。生地は新タイプの超長綿であるスビンコットンと、これも超長綿のスーピマコットンをブレンドしたオリジナル。生地の柔らかさを活かして横に縫い目がない丸筒で編み、ストレスフリーな着心地を実現。アームホールは広いが袖先は狭めのすっきりタイプなので、1サイズ大きめを選んで肩を落として着ても見栄えするだろう。

    ネックの後ろと肩まで伸び止めテープ(タコバインダー)で補強されている。洗濯で撚れさせず型崩れを防ぐ重要ディテールだ。

    たかが白Tシャツ、されど白Tシャツ。つい着てしまう日常着の代表格だからこそ、デザインするつくり手にとっても気合の入るアイテムのようだ。掲載した3着のうちサンスペルは紳士の国イギリスのブランドだが、オーラリーもキャプテン サンシャインもニッポンのブランド。日常着を深く愛す気持ちは、我が国が世界に誇る豊かな心である。