新ブランドWARDER(ワーダー)、ジャンルと価格の壁を越えたネクストレベルの服。

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    vol.105

    新ブランドWARDER(ワーダー)、ジャンルと価格の壁を越えたネクストレベルの服。

    構成、文:高橋一史 写真:青木和也 | 

    アウターベストとしても着られるウールのノースリーブジャケット。白いコットン裏地、ホーンボタンといった細部も凝っている。ジャケット ¥33,000(税込)/ワーダー http://warder.jp

    「Less but Better (より少なく、だがよりよく)」。20世紀半ばに活躍したインダストリアルデザインの巨匠、ディーター・ラムスの言葉である。この言葉を引用して自らの作風を言い表すファッションブランドが2021年に始動した。ニッポンの「ワーダー(WARDER)」である。彼らの服をしっかりと眺めていくと、もうひとつ別の言葉も当てはまると気づく。それは、「神は細部に宿る(God is in the details)」。ラムスと同じドイツ人の建築家、ミース・ファン・デル・ローエが好んだとされる名言である。高級生地のみならず縫製やディテールにも手を抜かない服づくりが、ワーダーを非凡な存在へと高め上げている。

    服でミニマリズムを成立させるには、複雑な構成要素をバランスよく調和させることが不可欠だ。手間を掛けた高級品はコストが掛かり、価格にも反映されるのが通例である。しかしワーダーは品質の割にリーズナブル。オーダーメイドシャツ仕様のほつれにくい根巻きつけのボタン、エジプト産ギザ綿から選りすぐられた「フィンクスコットン」といった贅沢な仕様を日常で愉しめる。中間マージンをなくし、販売も自社ECサイトを主な販路にすることで価格を抑えた。購入者に余計な金を使わせまいとする姿勢が、ミニマリストらしい発想で頼もしい。

    デザインは現代的なミックステイストに基づく。ワーク、ミリタリー、アメトラ、スポーツがベースなのはニッポン的だが、出来上がった服からはヨーロッパのモードの気配が色濃く漂う。古着をアレンジした “上質な大人服” がいま主流のトウキョウメンズとは一線を画す個性がある。

    上写真のジャケットも黒と白のコントラストがクリーンで、ドレッシーなムードに満ちた一着。表地はスーパー150'sの細番手ウールとカシミヤを混紡させたトロピカル生地。中綿入りで保温性があり、重ね着しやすいようにアームホームが広く、真夏を除く3シーズン着られるだろう。同素材のテーラードジャケットとのレイヤードコーデが想定された服だが、白Tシャツの上に羽織ったり、ジージャンやルーズなニットなどのカジュアルな服にも合わせやすそうだ。

    細部まで丁寧に考え抜かれた服づくり。

    右はシャツアウター、左はショートパンツ。ワークウエアをベースにしたゆったりとしたカタチのモダンなセットアップ。 シャツアウター¥23,100(税込)、パンツ ¥17,600(税込)/ともにワーダー http://warder.jp

    ディッキーズやカーハートに代表されるタフなワークウエアを、洗練された都会着に昇華したセットアップ。ワークの味わいを残すポリエステル・コットンの厚手ドリル生地を使い、シワになりにくくケアしやすい日常着に仕上げている。ショートパンツは裾幅が広く膝が隠れる丈のスラックス感覚。脇のポケットが縫い目と一直線上に揃いフォーマルさを醸す。シャツアウターはブルゾンとシャツの中間に位置するアイテム。ドレスシャツ仕立ての上品な襟と、ジッパーを隠した比翼仕立てのストイックな表情が秀逸だ。

    金ボタンがストライプ生地をエレガントに演出するスーパービッグシャツ。シャツを着たままパンツのヒップポケットにアクセスできる切り抜きポケットが背面につく。シャツ ¥33,000(税込)/ワーダーhttp://warder.jp)

    このアイテムは膝下までの丈を持つビッグシルエットのロングシャツ。部屋着のようにリラックスした爽やかなストライプ生地は、薄くしなやかな超長綿のトルファンコットン。空気をまとうようにしっくりと身体に馴染む。縫製ステッチが細かく襟先もシャープで、金ボタン以外はシャツボタンの最高峰である白蝶貝。一級品のドレスシャツのつくりだ。背中の腰部分にはインナーアクセスポケットがあり、機能と洒落心とが高い次元で両立されている。

    前述のシャツアウターを着たルック。ダボッと身につける現在のトレンドに即したデザインになっている。冬にバルキーなセーターを着たとき、冷たい風よけに羽織るのにもよさそうだ。photo © WARDER

    ロングシャツを同素材パンツと組ませたルック。フロントを開けてコートとして着るのもいい。表前立てとサイドラインを揃えた胸のビッグポケットは、ワーダーのアイコンディテールだ。photo © WARDER

    服をネット購入する時、特に注意すべきがサイズ感である。ワーダーは主にM・Lの2サイズ展開でフリーサイズもあるため、ECサイトに記載された採寸表をよく確かめよう。流行のオーバーサイズの服を大人が着る場合、全身をハイセンスに整えないと野暮ったくなりがちな難しさがある。ただし袖丈さえ合っていればどんな服とも組ませやすくなるので、着慣れない人はジャストを選べば安心だ。ワーダーは今年2月に、東京・渋谷パルコでポップアップショップを開催している。着て確かめられる貴重なイベントを見逃さないように、今後もブランドの動きをマメにチェックしたい。