大人のカーゴパンツは本物志向でいこう! ボリューム感が脚と体型をカバーする。

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    vol.104

    大人のカーゴパンツは本物志向でいこう! ボリューム感が脚と体型をカバーする。

    構成、文:高橋一史 写真:青木和也 | 

    カーゴパンツの代名詞的な「M-51」をベースにしたパンツ。記事冒頭の写真はこのパンツの背部分。パンツ ¥31,900(税込)、注染染めTシャツ ¥15,400(税込)/ともにナイジェル・ケーボン(アウターリミッツ TEL:03-5413-6957)

    ファッションの流れが現在のビッグシルエット、ルーズシルエットへと大きく移行したのは、2010年代後半から20年代にかけてのこと。それまで人気だったコンパクトな服装は過去に追いやられた。しかしこの期間に感度の高い大人がダボッとしたパンツを穿きはじめても、若者は頑なにスリムパンツを手放さなかった。ところが近年、街中で彼らがワイドパンツをたなびかせて闊歩する様子が目につく。大人の後追いとは少し寂しい気もするが、この服装がマスに広がり流行が続くのはゆったり好きには嬉しい話だ。

    軍モノのカーゴパンツがいま人気なのも、気分の表れといえる。動きやすさ重視のカーゴは腰回りがタイトで、腿から裾にかけて太い独特のバランスがある。さらにマチ付きフラップポケットや膝を曲げやすいタックといったディテールも複雑だ。それらの視覚効果で脚の形が曖昧になり、下半身にボリュームが出て体型もカバーされる。頭が大きく短足な我々アジア人には、これ以上ない便利なパンツなのだ。

    大人ならこうしたカーゴの中でも、軍モノにルーツをもつ本格タイプを選ぼう。ストーリーを内包する服には、流行を越えた確かな存在感があるからだ。ここで紹介する3本のうち、最初にご覧いただくのはイギリスのナイジェル・ケーボンの一本。古着コレクターのケーボンならではのデッドストックのような貫禄が秀逸だ。デザインはアメリカ軍のM-51とイギリス陸軍のヴィンテージとをミックスしたオリジナル。クラシカルなサスペンダーボタンもベルトループも備えられ、さまざまな年代の要素が詰まっている。各パーツの補強も万全で、アクティブに穿きたい人にも最適なタフ仕様だ。

    ディテールがどれもすっきりと整えられ、黄緑系のパステル色も美麗なドレスカーゴ。パンツ ¥35,200(税込)/タンジェント(TEL:050-5218-3859) パーカ ¥24,200(税込)/メキパ(アンシングス TEL:03-6447-0135)

    続いて掲載するのは、ドレスアップもできる新発想のカーゴ。今季の21年にデビューした日本のパンツブランド、タンジェントの一本である。同ブランドのラインアップはどれもミリタリーパンツに基づく。このパンツのベースは1960年代のベルギー軍のフィールドパンツだ。右フロントのマチ付きポケットなどイギリス軍と共通するディテールを有するベルギー軍の味わいがしっかりと再現されている。原型のシルエットをシャープにテーパードさせ、生地も高品位に置き換えたアレンジの妙が冴えている。

    ショーツの生地は頑丈なコットン・ポリエステルのリップストップ。腿左右の小ポケットは車での移動中にもモノを取り出せるようにこの位置にある。パンツ ¥26,400(税込) ハット ¥10,890(税込)/アークエアー(グリニッジ ショールーム TEL:03-5774-1662)

    最後にお届けするのは野外フェスやキャンプが似合うイギリスのアークエアーのショーツ。実はこれも軍モノのエッセンスが色濃いデザインだ。アークエアーを手掛ける会社のアークティスは、世界中に軍の装備品衣料を納入するメーカー。彼らが15年にタウンユース向けにブランド化したのがアークエアーだ。このショーツの原型はレンジャー部隊用のパンツ。股下に動きやすくマチがつき、ポケットやウエストバンドはベルクロ留め。シルエットも美しく見えるように工夫され、現代における本物を追求するアークエアーならではのこだわりが満載だ。


    ポケットにスマホといった重いモノを入れても見栄えするカーゴパンツは、手ぶらで過ごしたい日常の必須アイテムでもある。ただしラフな印象になりがちだから、品よく見せるにはきれいめな服やシューズを組ませるのがコツだ。麻のジャケットを羽織ったりローファーを履いたり、トラッドな着方をイメージするときっとサマになる。