これぞ現代の新定番。上品素材を纏ったトラッカージャケットで大人のリラックスを。

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    vol.103

    これぞ現代の新定番。上品素材を纏ったトラッカージャケットで大人のリラックスを。

    構成、文:高橋一史 写真:青木和也 | 

    紺ブレの夏用ウール生地を使ったトラッカージャケット。ドレッシーな気分で着られるデイリーウエアだ。ジャケット ¥28,600(税込)/ジェイプレス×クロ(クロ ギンザ TEL:03-6274-6257)

    デニム生地のショート丈ワークジャケットを、欧米ではトラッカージャケット(Trucker Jacket)と呼ぶ。「トラック運転手の上着」、ということである。1960年代にリーバイスが完成させた、両胸にフラップポケットがついたいわゆるサード(3rd)タイプの呼び名が一般化したものだ。これに近いディテールを持つジャケットは馬に乗るカウボーイに向けてリーが30年代に製品化していたが、タウンユースを想定した60年代のリーバイスが獲得したメジャー度には及ばなかった。左右対称でシンプルなサードこそが、現在まで続くトラッカージャケットの原型だ。

    このジャケットが近年、様々な素材に姿を変えて注目されている。流行が続くビンテージスタイルの系譜に属するアイテムであり、短い着丈は旬のワイドパンツと相性バツグン。スリムなパンツのときは、オーバーサイズのジャケットにすれば手軽にモードスタイルをつくれる。大人から若者まで着られ、価格もおおむね手頃となれば人気が出て当然といえるだろう。デニム素材の縛りから解かれたことで、自由に羽ばたいた好例である。

    家で過ごすテレワークにも最適なジャケットだ。ブルゾンやニットよりシャープだから、室内着の上に羽織るのにちょうどいい。上下がラフなスウェット 姿でもトラッカージャケットを着ると緊張感を出せる。さらに在宅勤務で椅子に座りっぱなしの時、裾が邪魔にならないのもメリット。運転手のための上着が、現在の私たちの日常を支えてくれる。

    ここでは2021年春の新作から厳選した3着を紹介しよう。どれもドレッシーな素材を巧みに使った大人向けの逸品だ。まず最初は上写真のモデルから。ジャコビ・プレスにより創業された120年の歴史をもつアメトラの老舗ジェイプレス(J.PRESS)と、2010年に誕生した日本のデニムブランドのクロ(KURO)がコラボしたユニークな一着である。ジェイプレスの紺ブレザー用の薄いウールサージ生地を使った、ドレスとカジュアルを融合させたデザインだ。品格があり、ブレザー好きの心をくすぐるニクい落とし込みである。フィッティングは今風にルーズで、ディテールは第二次大戦時のジャケットからのサンプリング。物資制限でポケットのフラップが外された時代のエッセンスが息づいている。

    ブラウスのごとく優雅な着こなしを生む、ウール・シルク・コットンのジャケット。ジャケット ¥49,500(税込)/フランネル(ブルーム&ブランチ青山 TEL:03-6892-2014)

    これも大戦時のジャケットをベースにしつつ、ミニマルな大人顔に仕上げられたモダンデザインである。「品よくビンテージを着たい」という日本人好みのファッション感覚に満ちたジャケットだ。素材は織りに凹凸のある、異素材混紡のサマー・ループヤーン。ドライタッチな強撚ウールは肌にベタつかず、リネンのようなサンドベージュの色とも相まって夏でも着ていられる。手がけたのは日本的美学をもつショップ、「ブルーム&ブランチ」を拠点とするフランネル(Phlannèl)。和装のごとくたっぷりとしたシルエットも彼らの得意技だ。

    サマーテーラリングの定番素材であるシアサッカーをワーク系ジャケットに応用したイタリアのセンスが息づく。ジャケット ¥79,200(税込)/タリアトーレ(トレメッツォ TEL:03-5464-1158)

    最後にお届けするのは、テーラリング発想で仕立てられたイタリアの優美な一着。両胸フラップポケットのベーシックなトラッカージャケットが凹凸に縮れたシアサッカー素材をまとい、ドレスとカジュアルを区別しないアイテムになった。着ると実感するのが、肩のラインの美しさだ。シルエットは全体的に細身で、上部が立体的にボディラインに寄り添い窮屈さを感じさせない。化繊混じりのコットン生地はストレッチ性があり、腕も自在に振り回せる。重量もとても軽量で家の中でも着ていたいほど快適だ。タリアトーレ(TAGLIATORE)のクオリティの高さがよく表れたジャケットである。


    トラッカージャケットの基本はデニム。とはいえラフなデニム素材を男性が都会的に着こなすには、高度なお洒落センスが要求されるのがいまのファッション感覚だ。この春は違う素材のものにトライして、形とディテールの味わいを愉しんではいかがだろうか。