クールに進化したタイダイ染めがパワフル! いつもの服装にプラスワンでフレッシュに着こなそう。

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    vol.102

    クールに進化したタイダイ染めがパワフル! いつもの服装にプラスワンでフレッシュに着こなそう。

    構成、文:高橋一史 写真:青木和也 | 

    2着ともにタイダイ染めのカットソー。手前の長袖スエットシャツ ¥27,500(税込)、奥の半袖Tシャツ ¥17,600(税込)/ヴァイナル アーカイブ(エルエムエイチ TEL:03-6427-5136)

    水にインクを垂らしたように滲んだ模様が広がるタイダイ染め。Tie(縛る)Dye(染め)の名の通り、布や服に糸を巻き付けたり折り畳んで小さく固まらせ、そこに染料を入れて広げて乾かせば完成する。夏の陽射しが映えるこの技法が近年、都会的なモードスタイルによく登場するようになった。その背景にはタイダイ染めが流行した1970年代リバイバルの機運があるようだ。ただし現代のグラフィックのセンスでデザインされている点が、過去の服と大きく異なる。誰もが着やすくアップデートされているのだ。ここでは3ブランドの2021年春夏アイテムを通して、ビンテージショップでは手に入らない新しい価値を探っていきたい。

    まず上写真の2着は、横一直線に染め分けされたスエットシャツとTシャツ。染料が染み込まない箇所が白いまま残る、染めの特性を生かしたクリーンな仕上がりだ。ラグビージャージを彷彿させるボーダー柄で、色彩はNBAのユニフォームのよう。ともに形はオーバーサイズで、スポーツウエアを街中で着るストリートスタイルのフィーリングだ。ボトムは黒パンツ、白ショートパンツといったシャープなものが合わせやすいだろう。シルエットをスリムにすれば、より都会的になりそうだ。柄のインパクトを主役にしてすっきりと着こなしたい。

    多様なテクニックでバリエーションが豊富に。

    夏のリゾート気分満載のプリントTシャツ ¥49,500(税込)/ミッソーニ(三喜商事 TEL:03-3470-8235)

    “色の魔術師” と称される、エスニック柄のニットが得意なイタリアのミッソーニがリリースしたTシャツ。裾部分がタイダイ染め……かと思いきや、生地表面にプリントして同様のニュアンスを表現した凝ったデザイン。爽やかなマリンボーダーの上部から滲み模様の下部へグラデーションで移り変わり、海辺のリゾート地のムードが一着の中に凝縮されている。値は張る服だが、夏の軽装をクラスアップさせるアートピースとして大切に身に着けたい。

    キャンバスのバケットハットも巾着バッグもトレンドアイテム。ソックスは軍足で、筒編みの仕立てにもこだわりがある。上から時計回りに、ハット ¥9,350(税込)、バッグ ¥8,800(税込)、ソックス ¥3,850(税込)/テンベア(テンベア トウキョウ TEL:03-3405-5278)

    インディゴの青と白のバイカラー小物シリーズは、モダンな顔つきの帆布バッグで知られるテンベアのアイテム。素朴なようでいて洗練された、絶妙な味わいのデザインだ。色を抜くブリーチ手法では出せない、くっきりとした色のコントラストが美しい。合わせる服装をシンプルにして、ジャケットの胸にポケットチーフを差すようなアクセント感覚で取り入れるとコンテンポラリーな印象になる。繊細な魅力を活かすコーディネートを愉しもう。


    “絞り” と呼ばれる染色は、古来からインドらのアジア諸国で使われてきた伝統技法だ。日本でも奈良時代には庶民に愛されていた。人気が大きく花開いたのは江戸時代とされている。西洋でファッションアイテムになったのは近代の60年代後半から70年代。ヒッピーのフラワームーブメントを受けてアメリカで染料が開発され、家庭でもTシャツがカラフルに染められてポピュラーになった。その一方でタイダイ染めは、サイケデリック、ドラッグといった当時のカルチャーの記憶を内包するものになった。そのカルチャーに属さない人には縁遠い存在にもなったのだ。こうした昔から続くイメージがいま払拭され、新しい動きを見せているのは吉報である。ロックダウンが続き鬱屈した気分で生きる世界の人々のファッションに、手仕事の温もりのあるタイダイ染めが元気と希望を運ぶ。