アフリカ出身デザイナーの服に驚嘆し、アフリカの色柄に心...
vol.101

アフリカ出身デザイナーの服に驚嘆し、アフリカの色柄に心躍る時代を迎えて。

構成、文:高橋一史 写真:青木和也 | 

コットンジャケットはシエラレオネの観光名所である大樹「コットンツリー」の幹を模したもの。間隔の狭い3ツボタン、マチつきサイドポケットなどディテールにも凝る。上質な厚手コットンのオーバーオールは、七宝焼きのような樹脂ボタンがアクセント。ポケットも多く機能も優秀だ。ジャケット ¥92,400(税込)、オーバーオール ¥105,600(税込)/ラブラムロンドン(エスディーアイ TEL:03-6721-1070)

ファッション連載「着る/知る」の101回目となる、今回のテーマはアフリカ。西アフリカ出身でロンドン在住デザイナーが手掛けるメンズブランド「ラブラムロンドン(LABRUM LONDON)」と、アフリカンテキスタイルでつくられる日本の小物・軽衣料ブランド「クラウディ(CLOUDY)を取り上げる。注目ポイントはどちらも、都会的でスタイリッシュなこと。行動が制限されストレスが溜まりがちないまの社会情勢の中で、身に着けて生活したい解放感と楽しさに満ちている。

近年のファッション界で、重要なキーワードが “ダイバーシティ” である。ショーやルックのモデルも有色人種が大幅に増え、体型も痩せ型から太めまで千差万別。着る男女の性別すらも問われなくなった。ボーダーレス化の流れは加速し、ヴァージル・アブローのようなスターデザイナーの台頭もあり、とくに黒人層の活躍が目立つ。2019年に南アフリカ出身のテーベ・マググが「LVMHプライズ」のグランプリを受賞したことも象徴的だ。

ここに紹介するラブラムロンドンを手がけるのは、小国シエラレオネ生まれのデザイナー、フォディ・ドゥンブヤ(Foday Dumbuya)である。同国はレオナルド・ディカプリオ主演の社会派映画「ブラッド・ダイヤモンド」の舞台になった国だ。家族でイギリスに渡ってロンドンのファッション学校に通ったドゥンブヤの服は、サビルローのテーラリング、イギリス軍のミリタリーウエアといった紳士服のグローバルスタンダードに基づく。服のバックボーンやカルチャーについては、次ページのインタビューをご覧いただくとして、まずはアイテムの魅力を探っていこう。

シエラレオネのメンデ族の頭をプリントした厚手のリネンシャツは、西洋の20世紀初頭の古いシャツがベース。自然界を感じさせるプリントのコットンパンツは、イギリス軍も採用していたグルカショーツのアレンジだ。シャツ ¥55,000(税込)、ショートパンツ ¥57,200(税込)/ラブラムロンドン(エスディーアイ TEL:03-6721-1070)

すべてが入念に計算された服。それがラブラムロンドンを手に取り、着て実感する印象だ。目を引くグラフィカルな色や図案はオリジナリティにあふれ、日本人が着ても違和感なく馴染む。裾が左右非対称になったヘンリーネックシャツはビンテージ好きをニヤリとさせ、オーバーオールは実に上品な顔つき。生地は麻、コットンといった天然素材の中から高品位なものが選ばれ、ハイモードの風格にも決して劣らない。さらに製造担当はイギリスの工場だ。

着るとよくわかるのが、ポケットの丸みや配置の仕方、ボタンの付け方などの巧みさである。人を洒落た印象にする最適なバランスでディテールが整えられている。おそらく一着一着をデザイナー自身が着て、微調整を繰り返した結果だろう。同じくロンドンでファッションを学んだデザイナーにドイツ人のフランク・リーダーがいるが、彼が作家または芸術家の呼び名が似合うクリエイターなのと同様に、ドゥンブヤも体温のあるモノづくりに力を注いでいる。

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