新型コロナウイルスと戦う! ファッション企業が続々と支援に乗り出した。Vol.1

  • 構成・文:高橋一史

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新型コロナウィルス対策の支援を3月上旬から行っている、イタリア・ファッション界の重鎮デザイナー、ジョルジオ・アルマーニ。

新型コロナウィルスが人々の日常に多大なダメージを与えているいま、各国のファッション企業が続々と支援に名乗りを上げている。多額の寄付のみならず、服の製造工場での医療用衣服やマスクの製造、自宅で楽しめるネット配信イベントの開催など、日頃の活動を応用した試みも目立つ。この不定期連載記事では、こうした支援をランダムに紹介していく。なお掲載の事例は、各企業(ブランド)の支援の一部にすぎないことにもどうぞご留意を。


アルマーニ・グループが、自社工場で医療用作業着を製造。


2020年2月のミラノコレクションで無観客ショーを開催し、当時もっとも被害が大きく、世界最大のラグジュアリー市場でもある中国へのメッセージも添えたジョルジオ・アルマーニ。3月上旬にイタリア医療機関へ125万ユーロ(約1億4,750万円)を寄付し、下旬にはイタリアの自社工場にて使い捨て医療用作業着の生産をスタート。本国イタリアへの寄付金は、現在総額200万ユーロ(約2億3, 430万円)になる。アルマーニは3月中旬に発行されたイタリア版『ヴァニティ・フェア』誌のインタビューで、拠点とする都市ミラノについて以下のように語っている。
「私はまもなくこの緊急事態が終わりを迎え、再びミラノが世界に向かって開かれることを希望します。私はそのことに関して楽観的でありたいと思います。なぜならそれこそが今、私たちが忘れかけていることだからです。人と人とが明るい展望を語り合い、伝えあうことを止めてしまえば、ミラノの街はエネルギーを失い、世界と自らを俯瞰するその視野を狭めてしまいます」


バーバリーがトレンチコートの製造工場で、ガウンとマスクを生産。

公式インスタグラムに投稿された、医療支援へのイメージ画像。

2018年にリニューアルされたバーバリーの新ロゴ。

コートで名高いイギリスの老舗バーバリーは、同国内のトレンチコート製造工場で、感染者のためのガウンとマスクの生産を計画。国の認可を得たのちに行われる予定だ。バーバリーはほかに、国内の医療従事者に向けた10万枚のマスク調達、オックスフォード大学で研究されるワクチン緊急開発への資金提供、食料不足を支援するチャリティー団体への寄付なども行っている。バーバリーCEOのマルコ・ゴベッティは支援活動に関して、「世界中がこのような状況であるからこそ、我々は団結すべきです」と強い決意を表明している。

リーバイス®はネットライブを毎日配信。

公式インスタグラムの画面ショット。

「STAY HOME,STAY CONNECTED.」とメッセージされたアイコン画像。

デニム界を代表するリーバイス®が3月23日より開始したのが、外出できない人のために毎日配信されるインスタライブだ。同社の拠点がカリフォルニア州にあり、アメリカで最初に外出禁止令が出たことから企画されたもの。毎週月〜金曜の現地時間17:01(日本時間9:01)から行われ、これまでに大御所ラッパーのスヌープ・ドッグ、ブレイク中のR&Bシンガーのカリ・ウチスなどが出演。なおスタート時間の17:01(午後5時01分)は、リーバイス®を代表するデニム「501」に由来する。

リーバイス®公式インスタグラム
www.instagram.com/levis/


新型コロナウイルス立ち向かう人に、KEENは10万足を無償提供。

3月28日にネット配信されたライブストリーミングフェス「KEENFEST」の1シーン。

自然環境の保護、災害ボランティアといった社会活動「キーンエフェクト」を日頃より実践しているシューズのKEEN(キーン)が、全世界で最大10万足のシューズを無償提供するキャンペーンを3月19日〜25日に行った。公式サイト上で医療従事者やボランティア、テレワークができず勤務を続ける人など、新型コロナウィルスと戦う知人や家族を紹介すると、その人にクーポンコードが送られネットオーダーによりKEEN製シューズが届けられるというもの。人々がネットでつながる時代ならではの、画期的な試みである。金額ベースで総額約10億円に相当するシューズは現在世界中に続々と届けられ、足元から人々の活動を支えている。


プチバトーが、職人のボランティアで布マスクを製造。

フランスにあるプチバトーの工場で行われたマスク製造のワークショップの様子。

職人の手づくりで製造された布製のマスク。

フランスの子ども服ブランドのプチバトーは、3月20日より3日間、国内のサン・ジョセフ工場で地域のテキスタイル企業とともにマスク制作のワークショップを開催。工場に勤務する職人がボランティアで参加し、約5000個を製造し地域の保健庁を通じて医療現場などに配布した。以降も同工場では毎週2万5000個が製造されている。なお日本のプチバトーでは、公式サイト(ブログ)内でTシャツをリメイクする布マスクのつくり方を公開中だ。新型コロナウィルスに対する布マスクの有効性については専門家の間でも意見が分かれるが、着用者のくしゃみの飛沫を減らす効果が期待されるため、咳エチケットに役立つだろう。

ープチバトー・オフィシャルブログー
http://blog.petit-bateau.co.jp/


生活の場に “美” があると、心にゆとりができ、未来へと歩む希望が生まれる。一人ひとりが得たこのような思いが集まり、社会という文化が形成されていく。ファッションという “身につける美” が、ここで大きな意味をもつ。ファッション企業の大切な役割は、個人と社会とをつなぐ架け橋にある。成熟した社会と密接に関わる重要な産業なのだ。

各国ファッション企業の支援活動を眺めていくと、拠点とする自国を守る考えを大切にして、地域密着型で多大な貢献をしていることがわかる。売上で世界トップランクの大企業をも有する、日本の各社の取り組みにも期待したい。誰もが余裕のない状況下ながら、「情けは人のためならず、巡り巡って自分のため」でもある。その行動はきっと未来に結びつくはずだ。