「就活用スーツ、無料で貸します」H&Mの社会貢献事業

  • 文:宮田華子

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LONDONロンドン

「就活用スーツ、無料で貸します」H&Mの社会貢献事業

文:宮田華子

イギリスに続き、アメリカでも5月13日からサービスが開始された。両国ともに現在は3カ月のテストローンチ期間。Photo: H&M

順調にロックダウン緩和が進むイギリス。一時はほぼ凍結状態だったジョブマーケットも、世の中が明けてくるに従い活発になると予想されている。このタイミングで、H&Mが就職面接用のメンズ・スーツを24時間無料でレンタルするサービス「ワン/セカンド/スーツ」を4月15日から開始した。

“セカンド”とは“秒”のこと。就職面接において、最初の一秒“ワン/セカンド”で決まる“第一印象”が重要なことは世界共通だが、服装は印象を大きく左右するもののひとつだ。

 「誰しも就職面接は緊張するものです。しかし服装が整っていれば、怖気づかずに済むはず」「(このサービスは)着るだけで得られる自信なのです」とH&Mマーケティング&コミュニケーション長のサラ・スパナ―は語っている。スーツをもっていない人、特に経済的に購入するのが難しい若者層が「自信をもって」面接に臨むため、ハード(スーツ)とソフト(心理)の両方から支援する取り組みだ。

レンタルの申込みはオンラインで行い、指定した日に自分のサイズのスーツが宅配で届く仕組み。返却が遅れた場合はペナルティ料金(50ポンド)がかかるが、この料金はチャリティへの寄付に使われる。

サービス開始に伴い公開された、映画監督マーク・ロマネクによるPR動画も好評だ。お母さんが息子に「緊張しているでしょう。でも聞いて。あなたは素晴らしい。あなたはあなたのままで輝いて」と滔々と語る音声が流れ、息子たちはその言葉を胸に、背筋を伸ばして面接に向かう姿が描かれている。

就活に臨む青年たちの精神的重圧は容易に想像できる。そんな時、「自信をもって着用できるスーツが、いまここにあること」が与える心理的効果は大きいはずだ。ポストコロナ時代を見据えた未来への一歩をサポートする試みは、今後世界に広がっていくかもしれない。


H&M「ワン/セカンド/スーツ」