代官山で開催中のヴァン クリーフ&アーペル期間限定エキシビション。ユニークな仕掛けにより生まれる、幻想的な世界に浸る

  • 写真:齋藤誠一
  • 文:高野智宏

Share:

代官山T-SITE GARDEN GALLERYで開催中の期間限定エキシビション、「LIGHT OF FLOWERS ハナの光」は色とりどりの花たちの一瞬の輝きとエレガントなジュエリーによる永遠の煌き、その相反する美しさの共演だ。

館内に3つの水辺が設けられ、そこに彩り鮮やかな晩春の花々が、生命の輝きを誇るよう咲き誇っている。奥には、そんな花々の一瞬を永遠に閉じ込め、眩いばかりに輝き続ける美しいジュエリーが並ぶ。

花々とジュエリーの類まれなる共演。これはフランスのハイジュエラー、ヴァン クリーフ&アーペルが代官山T-SITE GARDEN GALLERYで開催しているエキシビション「LIGHT OF FLOWERS ハナの光」の様子だ。

空間を演出したのは、華道家の片桐功敦。片桐がメゾンのジュエリーにインスピレーションを受け創造したのは、花をテーマとした美しく可憐で、なによりその生命の煌きと尊さを感じる空間だ。

片桐の手により、3つの水辺に鮮やかな花々が美しくいけられている。壁面にも片桐の手による草花の写真が貼られているが、これが美しい視覚効果を発揮する仕掛けとなる。

巧妙な仕掛けで生まれた幻想的な空間

片桐功敦(かたぎり・あつのぶ)●1973年、大阪府生まれ。24歳でいけばな流派、花道みささぎ流の家元を襲名。伝統的なものから現代美術的なものまでアプローチは幅広い。2018年にはヴァン クリーフ&アーペル心斎橋店にてprelude三部作のいけばなインスタレーションを展示。近著に、東日本大震災の爪痕が残る福島各地で再生の願いを込め花をいけるなど、約90点の写真を掲載した『Sacrifice―未来に捧ぐ、再生のいけばな』がある。

1906年の創業時より、ヴァン クリーフ&アーペルにとって創造の源であり続ける“花”。メゾンの象徴ともいえる花をモチーフとしたジュエリーに対し、片桐は「その姿勢にとてもシンパシーを感じました」と印象を語る。

「花のもつ美しさを忠実に再現しようと、精巧につくられている。生命力を感じる意匠や、花芯などの細かい表現も長い時間をかけ観察しなければできないこと。僕も花をいける際は、その花を最も美しく魅せるいけ方を考えます。生命の瞬間を切り取るいけばなと、その輝きを永遠に閉じ込めたジュエリーという違いはありますが、花に対する誠実な姿勢に共感したのです」

そんなメゾンの目線を活かすような展示を心がけたという片桐だが、単に花をいけただけでなく、そこに巧妙な仕掛けも忍ばせていた。

「僕が撮影した草花の写真を、半透明のフィルムに転写し壁に貼っています。そこに自然光が透過することで、草花の絵柄が水面に映り込む。館内には実像である花々と水面に写る虚像の草花が織りなす、幻想的な空間が生まれるのです」

期間中に何度か花が入れ替わりつつ、常時50〜60種が展示される。花を鑑賞するという行為は「自然からのエネルギーを受け取る行為でもある」と片桐は言う。

水面には壁面の草花がはっきりと投影され、あたかも水中にも花がいけられているかのような錯覚に陥る。この幻想的な演出が今回の展示の見どころのひとつだ。

壁面だけでなく、天井には草花の根を中心とした写真も飾られている。「これも水面に投影されます。美しい花の下には根が力強く張り巡らされていることを表現できれば」

会場奥に展示されたジュエリーの花々

有機的な躍動感を表現する壁面は、国内外の高級ホテルの内装も手がける気鋭の左官職人、久住有生によるもの。9つの小窓には、ヴァン クリーフ&アーペルのジュエリーコレクションが展示されている。

会場奥には、よりドラマティックな空間が広がっている。波紋のような美しい起伏を描く壁面にヴァン クリーフ&アーペルが誇る歴代の名作ジュエリーから現行コレクションまでが、一堂に展示されているのだ。

“創業時からの創造の源”という通り、1930年代のブローチやネックレスにも花をモチーフとした可憐なモデルが数多く存在する。それらが80年以上を経ても輝き、瑞々しく咲き誇っている。儚く咲いた花の、その一瞬の美しさを永遠に表現するメゾンの真骨頂だ。

また、4月26日から4月28日までの20時より、片桐をはじめ、現代美術家の須田悦弘、イラストレーターの黒田潔によるオンライントークセッションも開催される。いずれも花や植物をモチーフとした作品を数多く手がけるアーティストであり、「My Vision of Flowers(私にとってのハナ)」をテーマに創作意欲を刺激する花について思いを語る。

メゾンを象徴するモチーフである花にオマージュを捧げた特別なエキシビション。本展が長いトンネルの先に見える、一筋の光となるだろう。人間では決してつくり得ない、自然が生み出す造形と色彩の美しさ。コロナ禍のいまだからこそ、そんな花の生命力を感じてみたい。

ピンクサファイア、ダイヤモンド、ツァボライト、ガーネットをセットし、松の枝に結んだおみくじをイメージした、オープンエンドの「オミクジ ネックレス(パトリモニー コレクション)」

右:イエローゴールド、ダイヤモンド、マザー オブ パールの「ローズ ド ノエル クリップ、ミディアムモデル」、左:イエローゴールド、カーネリアン、ダイヤモンドの「ローズ ド ノエル クリップ、スモールモデル」

期間限定エキシビジョン LIGHT OF FLOWERS ハナの光
開催場所:東京都渋谷区猿楽町16-15 代官山T-SITE GARDEN GALLERY
開催期間:4/22〜5/9
開催時間:11時〜20時(4/26〜4/28のみ11時〜18時)
料金:無料
https://www.vancleefarpels.com/jp/ja/events/light-of-flowers-exhibition.html


オンライントークセッション My Vision of Flowers
開催期間:4/26(片桐功敦)、4/27(須田悦弘)、4/28(黒田潔)
開催時間:各回20時〜21時
料金:¥1,500(税込)

問い合わせ先/ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク
TEL:0120-10-1906

※いずれもヴァン クリーフ&アーペルLINEアカウント(@vancleefarpels)、またはエキシビション予約サイトトークイベント予約サイトより事前来場予約を受付。
※新型コロナウイルス感染症対策のため、エキシビジョン会場では入場の際に人数制限を行います。また、開催日時・内容などが変更となる場合があります。事前の確認をお薦めします。