約3年の工事を終えオリジナルの姿で蘇った、ニューヨーク...
NEW YORK ニューヨーク

約3年の工事を終えオリジナルの姿で蘇った、ニューヨークの名物駅舎。

文:鈴木希実

広さ1エーカー(約4,046㎡)、天井高 28mの開放感あるコンコース。この見事なコンバージョンは、アメリカが誇る建築事務所SOMの手によるもの。床と壁に使用された大理石は、延べ7,400㎡を超える。もうひとつの玄関口であるグランドセントラル駅が100年前に取り入れた大理石と同じ、テネシー州の採石場から供給されたものだ。photo: MTA

マンハッタンの表玄関のひとつであるペンシルベニア駅(通称ペン駅)が、3年と16億ドルをかけた工事を終え、駅舎「モイニハン・トレイン・ホール」がオープンした。今回の工事の目的は、1910年に完成したオリジナルの駅舎の復元と、設備の拡張。元々の駅舎は、カラカラ浴場やオルセー駅(現在のオルセー美術館)など、世界中の名建築の様式を参考に取り入れた、ニューヨークが誇る美しい建築物であったにもかかわらず、1963年に取り壊しが決定。幸いなことに外観とチケット売り場は取り壊しを免れ、その後増築され郵便局やオフィスとして使用されていた。

今回の工事でマディソン・スクエア・ガーデン地下の既存の駅舎と、8番街を隔てた新設の駅舎が地下通路で接続された。これまで狭い地下駅舎に詰め込まれていた、長距離鉄道のアムトラックと近距離列車のロングアイランド鉄道などがゆとりを持って配置され、駅としての機能とイメージが劇的に改善。8本の引き込み線路も加わり、合計21本の路線へのアクセスが可能になった。

いちばんの見所は、今回工事で蘇った鉄鋼のトラスと柱に支えられたガラス天井のコンコース。マンハッタンの空を仰ぐ光あふれるオープンな空間で、ホームへもアクセスしやすくなった。他にも、改善されたサイネージ、これからオープンする新しいレストランやショップに加えダイナミズムと変容性を象徴するパブリックアートも話題だ。

コロナの影響を受けつつも工事は続けられ、スケジュールも予算も遵守してプロジェクトは達成。街の新たなモニュメントとなる美しい駅舎が誕生したことは、出口の見えないパンデミック禍にあるニューヨーカーにとって、希望の明かりが差しこむような嬉しいニュースだ。

8番街に面するエントランスは、列柱が並ぶ厳かなボザール様式。元の駅舎の取り壊しを逃れた貴重な部分だ。建築物保存運動の影響で、いち早く歴史的建築物に指定された建物のひとつでもある。今回の工事ではファサードや700枚に及ぶ窓、空堀などの改修も行われた。photo: MTA

Pennsylvania Station

New York, NY 10119

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