黒と白のうつわに込めた自由と挑戦、陶芸家・吉田直嗣の感性を見よ。

  • 文:阿部博子

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白磁の素地に柄杓で勢いよく黒い釉薬をかけた、新作の茶碗。ほとばしる躍動感を感じさせる作品です。

黒と白のうつわをつくり続ける陶芸家、吉田直嗣。派手な文様でも強い色彩でもなくモノトーンにこだわるのは、使う人に形の美しさを感じてほしいからだと言います。現在、2018年7月22日まで東京・原宿のギャラリー「グラフペーパー」で、3度目となる個展『吉田直嗣展』が開催されています。

「均整のとれたうつわを美しいと感じるように、落ち葉や石もまた同じように美しい」と語る吉田の作品には、ルールに縛られない自由で寛容な姿勢が見て取れます。シンプルやミニマルという表現は、無駄な要素を削ぎ落としたものに対して使われることが多いですが、吉田は「削ぎ落としていくのではなく圧縮していくことで初めて生まれる造形と表情がある」と話します。

本展では、新しい手法を用いた抹茶茶碗が豊富に揃いました。あえてろくろと粘土の流れに身を任せて生まれたという形と、釉薬を柄杓で勢いよくかけることで現れた文様は、唯一無二のもの。まさに、一期一会の作品といえるでしょう。新作は、白い素地に黒い釉薬がほとばしるような文様の茶碗、異なるテクスチャーが幾重にも重なる白磁茶碗、赤みを帯びた鉄釉の陶器茶碗の3種類。常に新しい挑戦によって表現の幅を広げる、黒と白のうつわに注目です。

黒い色彩は、陶土に鉄を混ぜた鉄釉によって生み出されます。

磁器土に灰を混ぜた灰釉は、やわらかく温かみを感じる白色が特徴です。

白色のグラデーションが美しい、シンプルな中に力強さを併せもつ花器。

『吉田直嗣展』

開催期間:2018年7月14日(土)〜7月22日(日)
開催場所:グラフペーパー
東京都渋谷区神宮前5-36-6 ケーリーマンション1A/2D
TEL:03-6418-9402
開廊時間:12時〜20時
休廊日:月
会期中入場無料
http://graphpaper-tokyo.com