失敗しないグリーンの飾り方とは? プロが指南する5つのテクニック

  • 写真:黒坂明美(STUH) 文:佐藤周平

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自宅に植物を飾っても、なんだかしっくりこない......。魅せる空間づくりには、ちょっとしたテクニックも必要だ。そこで、毎日花を扱うプロに、飾り方を指南してもらった。

今回、話を訊いたのは中目黒にある隠れ家的なボタニカルショップ「ファーヴァ」のオーナー、渡辺礼人さん。都内の閑静な住宅街にある渡辺さんの自宅には、多くの切り花や植物がセンスよく飾られている。気に入った植物をただ思いのままに置くのではなく、まずは家の環境をしっかり理解し、そこに適応するグリーンを見つけることが大事、と渡辺さん。

「植物を育てる上で重要なのが、水、風、日の光です。お客様からこの植物は自宅でも育てられるのかとよく訊かれますが、絶対に大丈夫とは言えません。こればっかりは実際に育ててみないとわかりません。僕自身も何回も失敗して、自宅で育てられる植物を徐々に理解していきました。都心だと日当たりのよくない物件も多いので、まずは耐陰性がある植物から置いてみたり、安価な植物でトライ&エラーを繰り返すことが大切ですね。あとはその植物の原産地に思いを馳せること。たとえば本来は高温多湿のジャングルに自生している植物なら、密林なので日がそこまで当たらず湿度が高いことが想像できますよね? それなら直射日光を避けて、なるべく霧吹きで加湿してあげるといい。逆に日差しが強く乾燥した地域に生える植物なら、日当たりと風通しのいい場所に置くなど、植物がもともとあった状況をできるだけ意識してあげる。そもそも室内で自生している植物はないですからね」

水と光はわかりやすいが、風は意外と盲点。エアコンを使う時季は風の直射を避け、サーキュレーターで空気の流れをつくるのも大事だそうだ。では、渡辺さんが最も得意とする切り花の心得は?

「切り花なら日当たりが悪くても大丈夫なので、チャレンジしやすいです。僕がお薦めするのは、生活の動線に花を置くことですね。それだけで生活に彩りが出ます。初心者がやりがちなのは、花束を買ってきて、そのまま花瓶に活けること。花を飾る行為に特別感が出てしまうと、1回限りで長続きしません。まずは口の小さな花瓶を買って、2〜3本活けることから始めてみてください。きっと生活が変わりますよ」

Point1. 玄関には香りのある花を置き、帰宅時の気持ちの切り替えを

「最初に試してもらいたいのが、玄関に香りのある花を置くことです。嗅覚は自律神経に直接作用するので、帰ってきた時に花の香りを感じることで、オンとオフのスイッチが切り替わります」と渡辺さん。ついリビングなどの主要な生活空間に花を置きたくなるが、実は玄関が効果的だという。


Point2. 花瓶はそのつど片付けずに、観賞用として飾れるものを

「花瓶にこだわるのもお薦めです。花瓶=透明で筒状のガラスというイメージがありますが、私は避けたほうがよいと思います。単体で飾ることが難しく、タンスの肥やしになるケースがほとんど」と身に覚えのある指摘が。日常的に花瓶を目にすることで、それに合う花を選ぼうという気にもなる。


Point3. 大きな花瓶にまとめて入れず、小分けにして生活の動線や目線の先に散らす

「花束をもらったら、そのまま飾りたくなる気持ちはわかりますが、生活の動線に散らすと空間全体が華やかになります」という言葉通り、渡辺さんの自宅は、玄関からリビングへと向かう随所に植物が飾られている。また洗面所やソファに座った時の目線の先に置くなど、生活する上で目に入りやすい場所に置くのも効果的。


Point4. 花瓶に活ける時は、角度をつけて斜めに

「買ってきた花はそのまま飾るのではなく、活ける角度や長さを調整してあげるとより美しく映えます。基本的には瓶と花の高さが1:1または1:1.5くらいの比率にするとバランスがいいですね」と黄金比を解説する渡辺さん。葉の多い植物は瓶に対して斜めに活けると、ヌケができて空間が広く感じられるという。


Point5. Zの形に配置すると、空間が広く見える

背の高い観葉植物を置くと、圧迫感が出て部屋が狭く感じてしまうと危惧する人もいるだろう。だが、渡辺さんの自宅はそれを感じさせない。その理由は、上の写真のようにジグザグのZラインを意識しているからだ。「両端に高さを出してしまうと圧迫感が生まれてしまいます。リビングやダイニングはリラックスできる開放的な空間にしたいので、さまざまなサイズの植物を高低差をつけながら、上から俯瞰した時にジグザグになるように配置して、空間にリズムをつけました」

他にも参考にしたい、 プロならではの空間づくり

自宅のファサードには、日本やオーストラリアなど、さまざまな気候帯に自生する植物を実験的に植栽している。晴れた日は白と緑のコントラストが美しく、まるで都心のオアシスのよう。

重くなりがちな書斎にも花や植物を置くと、リフレッシュしてアイデアも生まれやすいという。

ファーヴァ
東京都目黒区中目黒3-13-31 U-TOMER 1F
TEL:03-6451-0056
営業時間:12時~19時(18時~19時は事前予約制)
定休日:火、第3月曜
https://farver.jp

※この記事はPen 2021年7月号「コーヒーとグリーン、ときどきポッドキャスト」特集より再編集した記事です。