2016年度のグッドデザイン賞が決定! 10月28日からはじまる“G展”に今年は一層のご注目を!

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    丸の内の「GOOD DESIGN Marunouchi」での展示の様子。

    2016年度のグッドデザイン賞が、9月29日に発表されました。今年は受賞数が1229件、そのうち「グッドデザイン・ベスト100」に選ばれたものも同時に紹介されました。審査委員長の永井一史さんは「過去最大規模の応募数ということもあり、デザインが社会により浸透したことを実感した1年でした。ひとことでデザインを表現しづらい時代ではありますが、社会のさまざまなレイヤーでデザインが生まれてきている。デザインに関わる領域も多様化しています。今年は特に生活のディテールに寄り添ったり、新しい価値を加えて継続的に育てたりするデザインを多く見ることができました。また、フォーカスイシューが審査委員の間で浸透することで、社会に通底する問題意識を持って審査することがスタンダードになってきました」と全体を振り返りました。

    審査副委員長の柴田文江さんは、「審査委員が現場に近い、若い世代の方が増えたことで、“ジャッジする”という観点ではなく、これからの日本のデザインをファシリテートしていくという意識を共有できて、これがグッドデザイン賞の役割のひとつだと感じるようになりました。受賞作では具体的に生活に密着したものの中に革新的な使い心地の提案があった。フォトジェニックであることがあらゆる場面で求められる時代において、そのようなものを私たちは丁寧に取り上げていきたい、と改めて思いました」と続けました。

    10月28日からいよいよ「GOOD DESIGN EXHIBITION2016(通称G展)」が東京ミッドタウンで開催されます。会場では受賞作の紹介と「ベスト100」の特別展示のほか、初日に大賞と金賞、特別賞の発表が行われます。また、渋谷のヒカリエではグッドデザイン賞の新たな取組み「そなえるデザインプロジェクト」の展示もスタートします。こちらは近年フォーカスされている災害に対するデザインのアプローチのニーズから、「防災・安心・安全」に対するデザインが取り上げられる予定です。

    また10月23日まで、グッドデザイン大賞候補の展示「みんなで選ぶグッドデザイン大賞」と、審査の過程で心に留まった応募作を全審査委員がひとつずつ選んだ展示「私の選んだ一品2016」を、都内2カ所で開催中です。(次ページへ続く)

    9月29日の記者発表では大賞候補6点の代表者も出席し、それぞれのデザインコンセプトを発表しました。

    東京ミッドタウン・デザインハブで開催中の「私が選んだ一品展」では、76名の審査委員がそれぞれ審査の過程で心に残った作品を展示しています。手書きのメッセージがアウォードとは異なる温度感を伝えています。構成は審査委員のドミニク・チェン氏。

    ただいま大賞候補作品を展示中! あなたも選考に参加できます!

    「乾電池関連製品 MaBeee(マビー)」(ノバルス株式会社)

    では、現在企画展「みんなで選ぶグッドデザイン大賞」を開催中のGOOD DESIGN Marunouchiで展示されている、大賞候補の6点を見ていきましょう。

    まず上写真の「MaBeee」は、単3乾電池のように見えますが、乾電池として装備した機器をスマートフォンでコントロールできるようになる、IoT製品です。MaBeeeの中に市販の単4乾電池を入れて、乾電池駆動製品に装着。専用のアプリとつなぎ、スマートフォンを振る・傾ける・音声で指示することで、電車のおもちゃのスピードを変えたり、ロボットを操作したりと全く新しい使い方が可能になります。丸の内の展示会場で実際に操作を体験してみましょう。

    「トラクター YT3シリーズ」(ヤンマー株式会社 アグリ事業本部)

    続いて「トラクター YT3シリーズ」は、6点の中でもフォルムからデザインの意図がわかりやすい候補です。デザインの背景には、高齢化する農家の後継者問題や自給率の低迷を、農業機械のデザインの見直しによって農業が職業として魅力的になるよう、若い世代の就農を促進したいという企業の思いが反映されています。ディレクターは奥山清行氏、デザインは奥山氏が代表を務めるKEN OKUYAMA DESIGNが担当しています。

    「賃貸共同住宅【ホシノタニ団地】」(小田急電鉄株式会社+株式会社ブルースタジオ)

    「ホシノタニ団地」は小田急線座間駅前に立つ築40年の団地型社宅をリノベーションしたプロジェクトです。全4棟を一般賃貸住宅と市営住宅に分け、1階部分に子育て支援施設や民間運営によるカフェを誘致。また敷地を団地住人だけでなく、地域の人々の交流の場となるように貸し農園やドッグランを設けるなどプランニングしています。企業の資産をそのまま活用し、建物や敷地を街に開いた点が評価されています。

    「本【東京防災】」(株式会社電通+NOSIGNER+株式会社電通テック+株式会社たき工房+株式会社ブレーンシップ+株式会社トランス・メディア+岡村優太)

    東京在住の読者は、2015年の防災の日に手元に届いたかもしれません。「完全東京仕様の防災ブック」で、東京都民が災害に遭遇した時に、それぞれの状況で適切に対応できるような情報をコンパクトにまとめています。とても大切な情報でありながら、コミュニケーションの設計不足で行政からの大切な情報がきちんと届かないケースが多いことに着目し、行政からの配布物を「読みたい」「面白そう」と思うデザインにしています。電子書店でPDF版が無償ダウンロードできるなど、「伝え方」の設計においてデザインの力が遺憾なく発揮されています。

    「ロボット・プログラミング学習キット【KOOV™(クーブ)】」(株式会社ソニー・グローバルエデュケーション+ソニー株式会社)

    2020年の小学校でのプログラミング教育必修を前に、誰もが楽しく遊びながらプログラミングを習得できるロボット・プログラミング学習キット「KOOV™(クーブ)」。カラフルなブロックを用いて形をつくり、プログラミングによって、さまざまな動きを与えて遊びながら学ぶことができます。幅広い年齢層がアクセスできることや、カラースキームなどのデザイン性が評価されました。こちらも丸の内の会場で実際にキットに触れることができます。

    世界地図図法【オーサグラフ世界地図】」(慶應義塾大学政策・メディア研究科鳴川研究室+オーサグラフ株式会社)

    「オーサグラフ世界地図」は、多面体図法による新しい世界地図図法です。現在世界中で使われているメルカトル図法による世界地図は、16世紀の大航海時代に作られたもので、北極海や南極大陸を正確な面積で表記することができない欠点があるのですが、オーサグラフ世界地図はまず面積が正確で、形の歪みも大きく減らしたこと、また全世界を長方形に収めつつ、地理関係を損なわずに全方向を繋げることができます。どの地域でも中心に据えることができるので、私たちの世界観を多様にしてくれる可能性が評価されています。

    ひと目で“このデザインがすごい”と感じるものよりも、どちらかというとじっくりと説明や解説を踏まえた上で、先進性やイノベーティブなデザインを納得する取り組みやプロダクトが多い2016年度の大賞候補。さまざまな要素を包括しながらものやプロジェクトを完成させていく、現代のデザインの奥行きと幅広さを感じます。

    実は大賞は一般参加型の選考形式をとっていて、GOOD DESIGN Marunouchiでは展示を見た後に、「これこそグッドデザイン大賞!」と感じた作品に来場者も投票することができます。この投票結果は今月28日から東京ミッドタウンで開催の「GOOD DESIGN EXHIBITION2016」で発表される大賞に反映されるのです。あなたの選んだ「グッドデザイン」が、今年の「グッドデザイン大賞」にどのようにつながるか。東京ミッドタウンのG展会場でぜひ体験してください。(小川 彩)


    関連記事:「グッドデザイン賞」の選び方、知っていますか?

    GOOD DESIGN EXHIBITION2016
    10月28日(金)〜11月3日(木/祝)
    会場:東京ミッドタウンB1F ミッドタウン・ホールおよびミッドタウン内各所(東京都港区赤坂9-7-1)、渋谷ヒカリエ8F(東京都渋谷区2-21-1)
    入場料:¥1,000(渋谷ヒカリエは無料、ミッドタウン内は一部無料エリアあり)

    LONG LIFE DESIGN EXHIBITION2016
    会期:10月28日(金)〜11月20日(日)
    会場:GOOD DESIGN Marunouchi(東京都千代田区丸の内3-4-1 新国際ビル1F)
    入場無料


    ・開催中の企画展(ともに入場無料)

    「みんなで選ぶグッドデザイン大賞」
    会期:9月29日(木)〜10月23日(日)
    会場:GOOD DESIGN Marunouchi(東京都千代田区丸の内3-4-1 新国際ビル1F)

    「私の選んだ一品2016」
    会期:9月29日(木)〜10月23日(日)
    会場:東京ミッドタウン・デザインハブ(東京都港区赤坂9-7-1 ミッドタウン・タワー5F)

    www.g-mark.org 協力:公益財団法人日本デザイン振興会