“フィンランドデザインの良心”と称されるデザイナー、カイ・フランクを知る充実の書籍が登場しました。

  • 文:山田泰巨

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著者の小西さんがいかにしてカイ・フランクと出会ったかが「カルティオ」の美しい写真とともに、綴られています。

1953年、戦後間もないフィンランドで発表された食器のシリーズが、世界中のテーブルウェアの概念を一新させました。アラビア社から発表されたそのシリーズの名は「キルタ」。現在はイッタラから「ティーマ」の名で販売されているので、ご存じの方も多いことでしょう。これをデザインしたのは、当時アラビア社のデザイナーであったカイ・フランク。同じシリーズだけでなく、他の食器と組み合わせることも念頭に置き、あえて装飾を抑えてつくられたこのシリーズ。当時、驚きをもって迎えられ、後進の食器デザインを変えたと言われる名作です。

そんな、カイ・フランクの功績を追った書籍『カイ・フランクへの旅 "フィンランドデザインの良心"の軌跡をめぐる』が発売されました。著者は、日本のイッタラの代理店「スキャンデックス」でクリエイティブ・ディレクターを務める小西亜希子さん。インテリアを学んでいた学生時代、『Pen』の北欧特集を手に旅した地で、カイ・フランクの魅力に惹かれていったと言います。

小西さんは、この書籍の中で、カイ・フランクを知る関係者の証言から、その足跡と人柄、さらに仕事の数々を、美しい写真とともにひも解いていきます。日本でもファンの多いカイ・フランクですが、意外なことに彼だけを追った日本語の書籍はこれが初めて。フィンランドはもちろん、私たちの生活の礎にもなっているカイ・フランクとはどんな人物だったのか。改めてこの本で、その魅力に触れてみて下さい。

豊富な資料とともに、カイ・フランクの歩みをたどります。

「旅の始まり」と題して、「ティーマ」と「カルティオ」が語られます。スタンダードなデザインがどのような足跡をたどったのかが紹介されています。

『カイ・フランクへの旅 "フィンランド・デザインの良心"の軌跡をめぐる』小西亜希子・著 永禮賢・写真 ¥3,456(税込) グラフィック社刊