北海道の気鋭作家がつくる、美しき木製クラフト4選。

  • 写真:白石和弘
  • 文:山田康巨

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きわめて高い人気をもつ、北海道在住の4人の作家による木製クラフトを紹介する。素材のもつ特性を活かし、精緻なつくりで目を惹くものばかりだ。


道産の白樺樹皮を用いた、珠玉のバンブーロッド

北海道の短い夏の始まりとともに活況を呈するトラウトフィッシング。上富良野町に拠点を構える望月雄太さんは、それに特化したバンブーロッドを製作する。天然の竹を用い、先に向かって細くなる竿は、繊細に見えるが粘り強くしなやかで、機能と工芸品のような美しさを兼ね備える。ひと際、目を惹くグリップは、北海道に自生する白樺の樹皮を積層させたもの。樹が十分に水を吸い上げる初夏にしか採れない貴重な素材だ。バンブーロッド¥440,000(税込) www.yudaimaker.jp

農民芸術を受け継ぎ、現代の感性で表した木彫り熊。

十勝平野の北西部、鹿追町に工房をもつ高野夕輝さんは、新たな可能性を示す木彫作家だ。北海道の木彫り熊は、尾張徳川家当主がスイスで目にした農民芸術を、旧藩士の入植した道南・八雲町へ伝えたことに端を発する。写真の木彫り熊は、カットした面だけで抽象的にクマを表す八雲町の伝統技法「面彫り」で製作。また、工房から見える日高山脈をモデルとしたシリーズは、荒々しい刃の跡が山の厳かさを伝える。手前から、熊¥12,650(税込)、日高山脈¥28,600(税込) http://page-hd.com

鉄媒染の軽やかな皿に、木々が重ねた時間が留まる。

札幌市の東、空知地方南部の三笠市で活動する木工作家の内田悠さんは、おもに道産のイタヤカエデやナラなどを用いて木々の生命力を感じさせる器を製作する。あえて削り跡を残さず、鉄媒染や柿渋で仕上げることで木目の濃淡を引き出す。軽く、ガラス塗装を施しているため汚れも付きにくい。写真の皿は、いずれもイタヤカエデ材に鉄媒染を施したもの。上から時計回りに、リム皿(径26cm)¥15,400(税込)、盆(径35cm)¥30,800(税込)、リム皿(径24cm)¥13,200(税込) www.yu-uchida.com

キハダの表情を活かした、オブジェのような香立。

木の表情や形状を活かし、器、アクセサリー、モビール、オブジェなどを手がける札幌在住の木工作家、辻有希さん。北海道に自生する落葉樹・キハダの節や割れを取り入れた香立は、プリミティブなオブジェのような佇まいが魅力だ。香立の穴は無作為に開けられているように見えるが、灰が落ちるところや安定性からその位置が定められている。ただそこにあるだけでも純粋に木の表情を楽しむことができ、時とともに深みを増すのもうれしい道具だ。香立、各¥7,700(税込)〜http://akitsuji.com