デザイナーたち26名の仕事の裏側を見せる『㊙展』は、何時間でもいられるほど面白い。

  • 文:はろるど

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『㊙展』会場風景(ギャラリー2)。全26名のデザイナーの原画や模型がところ狭しと並んでいる。大変なボリュームなので時間に余裕をもって出かけたい。撮影:吉村昌也

1953年に「デザインの啓蒙」を目的として松屋銀座を拠点に設立され、現在は26名のデザイナーや建築家などによって構成されている日本デザインコミッティー。

そのメンバーがデザインの過程で生み出したスケッチや図面、模型を一堂に集めたのが、21_21 DESIGN SIGHTで開催中の『㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画』だ。ただ一口に「原画」と言っても内容は驚くほどさまざま。原研哉の東京オリンピック・パラリンピックのエンブレム案や、隈研吾の高輪ゲートウェイ駅の手書きのスケッチも目を引くが、佐藤卓の普段使いのハサミやペン、また新見隆の蔵書や展覧会のチケットなども展示されていて、デザイナーの道具や関心の矛先まで知ることができる。中には日記やメモ帳、スクラップブックもあり、デザイナーの仕事場の机を見学しながら、デザインの誕生のシーンに立ち会っているような錯覚を覚えるほどだ。

映像作品『原画が生まれるところ』では、鈴木康広や山中俊治らのアトリエを取材。彼らが手を動かし、ペンを走らせ、思考を膨らませていく様子が見られる。『作家たちの椅子』のコーナーでは、日本デザインコミッティーの新旧メンバーがデザインした椅子が展示され、実際に腰掛けることも。メンバーがデザインを志したきっかけや仕事への取り組み方を語った、計30時間にも及ぶインタビュー集も大変な労作で、もはやデザイナーらの秘められた思考を丸裸にしていると言えるかもしれない。

展示では「見方のヒント」として、デザイナーごとの方法の違いや、会場の壁面に投影された完成品との比較に着目したり、「原画」をスケッチして観察したりすることを勧めている。「原画」の量は膨大。頭を空っぽにして、マル秘が開放されたデザイナーたちの宝のようなアイデアを探りたい。

建築家の隈研吾は、建築デザインを担当した高輪ゲートウェイ駅(JR東日本)のスタディを展示。アイデアを記した膨大なメモともに、折り紙をモチーフにした障子を思わせる大屋根の模型に目を奪われる。駅の開業予定(暫定)は2020年3月14日。撮影:吉村昌也

2014年〜19年に大分県立美術館の館長を務め、武蔵野美術大学教授でもある新見隆の展示。器や人形、それにスケッチや蔵書、展覧会のチケットなどが並ぶ。新見の生活を覗きながら、活動の軌跡を追いかけるようだ。撮影:吉村昌也

原研哉『東京オリンピック・パラリンピックのエンブレムのスケッチ』2015年 人の輪がマグマのように渦巻くデザイン。繊細なタッチで美しい。photo: Harold

『原画が生まれるところ』(映像:ドローイングアンドマニュアル)  原研哉、伊藤隆道、鈴木康広、山中俊治のアトリエや制作現場に取材した全12分の映像作品。デザイナーの思考がダイレクトに反映されたような素早い手の動きに注目だ。撮影:吉村昌也

『㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画』

開催期間:2019年11月22日(金)~2020年9月22日(火・祝)
※2020年5月31日(日)まで休館、6月1日(月)再開予定。事前予約制
開催場所:21_21 DESIGN SIGHT
東京都港区赤坂9-7-6
TEL:03-3475-2121
開館時間:10時~17時30分 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:火(2月11日、9月22日は開館)
入場料:一般¥1,200(税込)
www.2121designsight.jp
特設サイト:http://designcommittee.jp/maruhi
※会期や開館時間、休館日などが変更になる可能性があります。事前に確認をお薦めします。