「11ぴきのねこ」に会いに行こう! 馬場のぼるの展覧会がはじまります。

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    『11ぴきのねことあほうどり(部分)』こぐま社 1972年刊 印刷原稿(特色刷り校正用リトグラフ)

    1967年に発売された絵本『11ぴきのねこ』。とらねこ大将を筆頭に、11ぴきのねこたちが珍道中を繰り広げる、なんともほのぼのとした物語です。30〜40代のみなさんなら、子どもの頃楽しんだ人も多いのではないでしょうか?
    11ぴきのねこたちは、ダメと言われればそれをやり、行くなと言われればそこへ行く・・・一見どたばたで、ハラハラさせる問題児。でも、絵本を読んでいる私たちは、「バカだな~」と思いつつ、最後にはくすくすと笑いが止まらなくなってしまうのです。
    中でも、『11ぴきのねことあほうどり』は秀逸です。ある日コロッケ屋を始めたねこたち。大繁盛の日々が続きますが、次第に売れ残りが多くなり、残り物をごはんにする毎日。最初はおいしいおいしいと喜んで食べていたけれど、だんだん飽きてきてしまい、「とりのまるやきが食べたいなあ」と、妄想を始めます。そこに突如としてあほうどりが現われて、「こんなにおいしいコロッケを、国の兄弟にも食べさせたい」というからしめたもの。コロッケを焼きに行きましょう!(=兄弟もろともまるやきにして食べちゃおう!)と、早速あほうどりの国へとでかけることに。到着した11ぴきの前に兄弟たちが順番に現われて・・・あれ?なんだか様子がおかしい・・・? 
    これ以上はネタバレになってしまうので控えますが、物語の結末が本当にユーモラスで愛らしくて、じわじわと心にしみるのです。素朴な絵にも心惹かれます。あほうどりのお話では、コロッケがなんともおいしそうで、読み終わった後にはいつもコロッケが食べたくなりました。ねこたちの表情や仕草にも愛嬌があふれています。
    この11ぴきのねこの生みの親は、馬場のぼるという漫画家・絵本作家。1927年に生まれ、まず漫画家としてデビューした馬場は、『ポストくん』『ブウタン』を発表。手塚治虫とは親友で、福井英一とともに“児童漫画家界の三羽ガラス”と言われ、人気を博しました。絵本作家としても活躍し、数々の作品を遺した馬場のぼるの特別展『11ぴきのねこと馬場のぼるの世界展』が、いよいよ7月19日からスタートします。人気の『11ぴきのねこ』シリーズをはじめ、絵本や漫画の印刷原稿、原画、スケッチ、加えて幼少期・青年期のノートやイラストなど、貴重な作品が並びます。
    欲望のままに振る舞った結果もたらされた問題を解決すべく、11ぴきのねこたちが力を合わせて頑張るさまは、なんとも微笑ましく、私たち人間の姿と重ね合わせてしまうはず。
    大人になったいまだからこそ、改めて読み直してみてはいかがでしょう? そして展覧会で、さらに広がる馬場のぼるの世界をじっくり楽しんでみてください。(Pen編集部)

    『11ぴきのねことあほうどり』こぐま社 1972年刊 印刷原稿(特色刷り校正用リトグラフ)

    『11ぴきのねことへんなねこ』こぐま社 1989年刊 印刷原稿(特色刷り校正用リトグラフ)

    『11ぴきのねことあほうどり』こぐま社 1972年刊 ラフスケッチ(紙、ボールペン、色鉛筆)

    『11ぴきのねこと馬場のぼるの世界展』
    7月19日(土)~8月31日(日)

    八王子市夢美術館
    東京都八王子市八日町8-1 ビュータワー八王子2F
    開館時間:10時〜19時 ※8/1、2は~20時。(入館は閉館の30分前まで)
    休:月(7/21は開館)、7/22
    料金:一般¥500、学生(高校生以上)・65歳以上¥250
    TEL:042-621-6777
    www.yumebi.com