中国で4000万人を動員した青春映画は、若者たちの美しい日常に切なさが募る。

  • 文:細谷美香

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文:細谷美香

Profile : 映画ライター。コメディや青春映画から日々の生きるエネルギーをもらっている。クセが強くて愛嬌がある俳優に惹かれる傾向あり。偏愛する俳優はニコラス・ケイジです。

中国で4000万人を動員した青春映画は、若者たちの美しい日常に切なさが募る。

中国では4000万人を動員、文芸ドラマというジャンルとしては異例の大ヒットを記録しました。
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時代に翻弄される若者たちの姿は数多くの映画で描かれていますが、中国映画『芳華-Youth-』の舞台になっているのはまさに激動の時代。文化大革命から毛沢東の死、過酷な中越戦争、そして改革・開放へと、1970年代から90年代の荒波を必死で泳ぎ切ろうとした若者たちの青春が描かれています。

17歳で軍の歌劇団、文工団に入団した主人公のシャオピン。周囲に馴染めずにいる彼女に優しく言葉をかけて世話を焼き、支えてくれたのは模範兵のリウ・フォンでした。日々、稽古や軍の任務に明け暮れるなか、文工団に所属する若者たちの運命は岐路を迎えることになります。

映画『唐山大地震』などの大作で知られるフォン・シャオガン監督は、自身も所属していた文工団での忘れがたい経験を、この映画に焼き付けたのだといいます。監督にとってその日々は厳しくもまばゆく、その後の人生を支えるかけがえのない思い出になっているのでしょう。柔らかな光に包まれて華麗に踊る女性ダンサー。素足で水浴びをする彼女たちに、じゃれてボールをぶつける男たち。蛍光灯にふわりと赤い布をかけてムードを盛り上げ、こっそりテレサ・テンの歌声に耳を傾けた夜。ノスタルジックな色調で描かれたスケッチの連なりはとても清らかで甘酸っぱく、あまりにも美しい。だからこそ、若者たちが戦いに身を投じていく悲惨な戦争の場面のコントラストが、強烈に胸に響いてきます。

家族への想い、報われない片想い、いじめや仲違いのエピソードが織り込まれ、激動の日々にもありふれた日常があったことが伝わってきます。言葉少なに一途に思いを貫いて生きるヒロイン、シャオピン。時代に翻弄された彼女の穏やかな“その後”も描き出した、時を越えて共感できる青春映画です。

『シュウシュウの季節』などで知られるゲリン・ヤンの原作をもとに映画化。
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模範兵のリウ・フォン(写真右)を演じるのは『空海-KU-KAI-美しき王妃の謎-』のホアン・シュエン。
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『芳華-Youth-』

監督/フォン・シャオガン
出演/ホアン・シュエン、ミャオ・ミャオほか
2017年 中国映画 2時間15分 
4月12日より新宿武蔵野館ほかにて公開。
www.houka-youth.com