全国の鉄道好きに捧ぐ! 鉄道風景を陸と空からとらえた吉永陽一の写真展、『いきづかい—いつもの鉄路』が面白い。

  • 文・幕田けいた

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地上からは見慣れている路線も、空から見ると「神の視点」的な不思議な風景になります。

鉄道の駅には、都市の発展に伴って、商業施設を取り込みながら複雑に巨大化していく大型駅もあれば、地方には人口減少の影響で廃止される駅もあります。利用客数の違いはあれど、それぞれに共通するのは、その駅を使ってきた人々の物語があることでしょう。暮らしの中で紡がれていくそんな物語に、寄り添うようにシャッターを切ってきたカメラマン、吉永陽一の写真展『いきづかいーいつもの鉄路』が2018年4月27日から開催されます。

大都市のビルの狭間の路地から眺める列車、地方駅の無人の駅舎……。どのカットも、いつかどこかで見た風景です。この写真展も、吉永が学生時代から撮りためてきた、そんな「日常の鉄道風景」のアンサンブルで構成されています。

最大の特徴は、吉永得意の「空鉄」。これはセスナ機やヘリコプターから鉄道風景をとらえた空撮鉄道写真です。一見、なにげない作品にも見えますが、実は、列車の運行時間と通過する位置を調べ、猛スピードで移動する飛行機で、走る車輛を追跡し、ベストのタイミングで撮影するという離れ業。飛行機の飛ぶ時間や場所の計画は場合によっては制約があるので、「たまたま」が通用しない撮影技術なのです。

空と地上、ふたつの視点から眺める鉄道風景。「いつもの鉄路」は、時代や土地によって、常に移り変わっていきます。吉永の作品の中には、いつまでもあるとは限らない記憶の中の風景の一瞬が、優しく切り取られています。きっと、あなたの思い出の中の物語も発見できるのではないでしょうか。  

展示される作品は、‟空鉄”はデジタルカメラ、地上の写真は6×6フォーマットのフィルムカメラで撮影しています。

秋田県の由利高原鉄道鳥海山ろく線の久保田駅。現代の日本ではもう数少なくなった、無人駅があるのどかな風景です。

ビル街を抜けて走る東横線。都会の路線の真下にも、人々の生活が見えます。

静岡県の伊豆箱根鉄道駿豆線の無人駅。列車を待つ乗客の姿に、物語が見えてきます。

吉永陽一写真展『いきづかい-いつもの鉄路』

開催期間:2018年4月27日(金)~ 5月10日(木)
開催場所:富士フイルムフォトサロン 東京 スペース2
東京都港区赤坂9-7-3  フジフイルム スクエア内
開廊時間:10時~19時  ※入場は閉場の10分前まで、5月10日は16時まで
会期中入場無料

ギャラリートーク:
4月27日(金)、4月29日(日)、4月30日(月・祝)、5月4日(金・祝)、5月5日(土)、5月6日(日)
※ 各日 16時~16時30分までを予定。参加無料、予約不要、座席なし
http://fujifilmsquare.jp/photosalon/tokyo/s2/18042702.html#event18042702