高校時代のピュアな想いがよみがえる! ファンタジー映画『忘れないと誓ったぼくがいた』は必見です。

    Share:

    高校生ぐらいまででしょうか? いつまでも果てしなく続くと思われた未来に向かって、さまざまな空想を抱いていたのは。いまある恋愛がこの世で一番尊いものだと信じて、一生それが続くと信じていたのも、このころまででしょうか。

    映画『忘れないと誓ったぼくがいた』は、そんなかつての自分の想いをわき上がらせます。ストーリー自体は、導入はシンプルで、高校三年生の主人公・葉山タカシが、ある日、ひょんなことから、織部あずさと出会うことからはじまります。不思議な力で彼女に引き寄せられてゆくタカシ。彼女の名前を何度もたずねるけれど、彼女は悲しそうな顔をしてはぐらかすだけ。そして、ある日、こう告白するのです。「私に会った人たちは全員、数時間後に私の記憶が消えているの。ただ理由もなく、『私のことだけ』が記憶から消えているの」。あずさに恋心を抱いていたタカシは、彼女に誓います。「俺は忘れない。絶対にあずさのことを忘れない」と。

    「私、3年D組なの」とあずさはいいますが、タカシの仲のいいD組の友人たちは「あなた誰なの?」と彼女の存在を否定します。あずさ曰く、彼女のことをもはや父親でさえ覚えていないといいます。その状況をある意味瑞々しく、ある意味まだぎこちない、主演の若いふたり(村上虹郎と早見あかり)が演じるものですから、当初はありがちな日本映画を想像してしまいます。けれども、そのプロットが、のちに実に面白く展開してゆくのです。そこに織り込まれる、ふたりの純粋な恋心がまた切なく、見るものを空想の世界へとグイグイと引き込んでゆきます。

    そして、最後に。この映画の展開を予測できなかったのは、見るこちら側の感性が、高校生のころのような柔軟さと瑞々しさを失っていたからだと気付かせます。そしてそこでわき上がる感情が、久しぶりに味わうものだということにも気付かされるのです。(Pen編集部)

    原作は、日本ファンタジーノベル大賞受賞作家・平山瑞穂によるもの。主演の村上虹郎は、父を俳優の村上淳、母を歌手のUAに持つ日本映画界の注目の新星。

    『忘れないと誓ったぼくがいた』
    監督:堀江 慶
    出演:村上虹郎、早見あかり
    2015年 日本映画 1時間34分 配給:日活
    3月28日(土)~ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー
    http://wasuboku.com