アンジェイ・ワイダ監督、映画『ワレサ 連帯の男』のワレサ委員長を知っているか?

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    いまから25年前、現在のロシアは、ソビエト連邦でした。ドイツは東と西に分断されていて、チェコとスロバキアは、チェコスロバキアというひとつの社会主義国でした。そんな説明から始まるほどに、時というのはあっという間に過ぎ、人々の記憶は薄れ、いまの若者はそれら事実に対する実感はきっとないのでしょう。この映画の舞台となるポーランドも社会主義国でした。ソ連の崩壊後は民主主義の国となりましたが、そこに至るまでには、民衆の長い苦悩と抵抗の歴史がありました。
    映画『ワレサ 連帯の男』は、ソ連邦を中心とする社会主義国家が倒れた「東欧民主化」から25年を迎える今年、ポーランドのグダンスクにおける独立自主管理労組「連帯」の闘いを、初代委員長レフ・ワレサと彼の家族の日々を通して映し出します。1970年の食糧暴動を機に、ひとりの電気工が労働階級のリーダーへと成長していく背景には、検閲、思想統制はもちろん、人間を人間として扱わない“人間”の存在があり、暴力や誹謗中傷、不条理なる服従や束縛によって身体の芯から熱く燃えたぎるような怒り、憎しみが生まれます。その様子は、現代の若者にはもしかしたら理解しがたいことかもしれません。しかし、たった25年で変わった世界は、25年でふたたび変わりうるのでは。そのときに、このワレサという男のとった行動や守り続けた信念がわかるかもしれません。観ておいてもらいたい1本です。(Pen編集部)

    ワレサは1983年にノーベル平和賞を受賞、1990年~95年までポーランドの大統領を務めた。私生活ではグヌタ夫人と1969年に結婚。映画では、グヌタ夫人の芯の強さがいかにワレサを支えたかが、当時の夫人が抱えた問題とともに巧みに描かれている。

    『ワレサ 連帯の男』

    監督:アンジェイ・ワイダ
    出演:ロベルト・ヴィェンツキェヴィチ、アグニェシュカ・グロホフスカ
    2013年 ポーランド映画 2時間7分
    配給:アルバトロス・フィルム
    4月5日から、岩波ホールほか全国順次ロードショー