『スポーン』や『ヴェノム』を生んだ伝説のクリエイター、 トッド・マクファーレン単独インタビュー。

  • 文:柳 亨英

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伝説的なコミック・クリエイターにして、トイ・メイカーでもあるトッド・マクファーレン。

1990年代、世界中で大ブームを起こした「スポーン」というアメコミのキャラクターを覚えていますか? そのフィギュアは当時ファッションアイテムとなり、エアジョーダンなどとともに裏原宿や竹下通りのショップで売られていたものです。そのスポーンと、スポーン・フィギュアの生みの親であるトッド・マクファーレンは、昨年映画が公開されて世界的な話題となったキャラクター『ヴェノム』の生みの親でもあります。今回、多忙を極めるマクファーレンへの独占インタビューに成功し、キャラクター誕生の秘密からスパイダーマンへの熱い想いまで、胸の内を聞くことができました。

——まずは「ヴェノム」誕生の経緯を教えていただけますか?

マクファーレン ヴェノムは、アメイジング・スパイダーマンの連載中にヴィランとして登場しました。僕がアーティストとして参加していた時、ピーター・パーカー(スパイダーマン)はブラック・コスチュームを着ていたのですが、僕は黒いコスチュームを着たスパイダーマンを描きたくなかった。赤と青のコスチュームを着ていないスパイダーマンなんて僕にとってはスパイダーマンじゃないと思ったからね。けれども編集部は黒いコスチュームのスパイダーマンは人気があるので変えたくなかった。そこで僕は、黒いコスチュームを着た別のキャラクターを作ることを提案したんです。そうすれば、僕は赤と青のコスチュームのスパイダーマンを描くことができるし、黒いコスチュームも残すことができる。マーベルが認めてくれたので、僕はデザインスケッチを起こすことにしたのです。黒いコスチュームはエイリアンのクリーチャーでもあるので、大きなモンスターにしました。前かがみにしたり爪を大きくしたり、口も大きく、舌も出して。でも最初はいまほど舌は大きく長くはなかったんです。そのスケッチをライターに渡し、ヴェノムというキャラクターが誕生しました。ライターには、ヴェノムの中にはエディ・ブロックという人物が入っているといわれましたが、僕はただのモンスターと思ってデザインしていたので、特にデザインを変えたくありませんでした。そこでこのコスチュームがエディを飲み込んでいるようにしてはどうだろうかと提案して、それが通ったのです。さらにスパイダーマンが簡単に倒せないように大きくしました。もっと知恵を使わないと彼を倒せないようにするためにね。もしマーベルに言われた通りにブラック・コスチュームのスパイダーマンを描いていたら、ヴェノムは誕生していなかったかもしれません。

——その後ヴェノムは映画になり、世界的な大ヒットを納めました。感想を教えていただけますか?

マクファーレン 幸運にもワールド・プレミアに招待されました。ヴェノムを一緒につくり上げた共同クリエイター、ライターのデビッド・ミクライニはストーリーについていろいろ気にしていましたが、僕は見たいと思っていたクールなものをたくさん見ることができて嬉しかったです。大きく、圧倒的なヴェノムをスクリーンで見ることができましたね。

——映画『スパイダーマン3』はご覧になりましたか? 

マクファーレン あのヴェノムはあまり大きくありませんでしたね。個人的にはがっかりした記憶があります。トム・ハーディのヴェノムは見た瞬間に「これだ!」って思いましたよ。僕が描いたものにずっと近かったから。あくまでも僕の意見ですが、けっこう満足しています。

——スパイダーマンのコミックスを担当していた頃の思い出などありますか?

マクファーレン スパイダーマンを担当することになったとき、僕は赤と青のコスチュームのクラシックなスパイダーマンを描きたいと思いました。同時に、過去30年にわたって先人たちが行ってきたことを繰り返したくないともね。なかなか人に理解してもらえないのですが、ライターでもアーティストでも、原稿を書くときは、常にひとりで作業をしているわけで、テーブルの前にいる時はなにより自分が楽しむことが重要なのです。僕が担当するようになった時、どうすれば楽しみながら描いて〆切に間に合わせられるのかを考えました。また、スパイダーマンという言葉を見たとき、これまではみな“マン(人)”という言葉に重点を置いているようでしたが、僕は「そうじゃない、重点は“スパイダー”に置くべきだ」って思いました。ピーターがコスチュームを着ても僕は彼のことを“マン”とはあまり思わずに、面白いポーズを取らせたり、目を大きくして虫っぽくしてみたり、もっと蜘蛛のウェブを加えてより蜘蛛のようにしたり、クールなキャラクターにしました。なによりデザインや描くことを楽しんだんです。トラブルもありましたけどね(笑)。(マーベルは)象徴的なキャラクターをいじられて困ったのではないでしょうか。でも、楽しんで描いていたらどんどん売り上げが上がり、ファンのおかげで思い描いたスパイダーマンを描き続けることができました。残念ながら、編集部からはあまり僕の個性を出しすぎるなと言われてしまい、僕も次第に疲れてきて、最後は「スパイダーマンのコミックを)去ることになりました。描いていてとても楽しかったし、いまもあの頃を懐かしく思っています。

——「スポーン」の映画について何か教えていただくことはできますか?

マクファーレン 現在、資金面をまとめています。それから組むスタジオも探しています。『ヴェノム』の成功がプッシュしてくれるとよいのですが。(『ヴェノム』の)トレーラーには必ず僕の名前がヴェノムの共同クリエイターとして出てきますからね。もし願いがかなうなら、ソニーと一緒に仕事がしたいですね。ヴェノムとスポーン、両方がいるなんてクールだと思いませんか? 僕のキャラクターが両方ともひとつのスタジオにいるんです。もしかしたらいつかふたりが出会うことだってあるかもしれない。いつか(ヴェノムを)監督できるかもしれない。ヴェノムもこれだけヒットしていて、スポーンもうまくいってくれれば、クロスオーバーだって夢じゃないと思うんです。あくまでも10歳児の僕の意見ですけど、実現したらクールですよね(笑)

スパイダーマンの担当を離れたあと、マクファーレンは仲間たちとイメージ・コミックスという新しい出版社を立ち上げ、「スポーン」を発表します。さらに自分のつくりたい玩具をつくるための会社、マクファーレン・トイズも立ち上げ、コミックスでもフィギュアでも大成功を納めます。映画『スポーン』の公開はまだ未定ですが、数々の夢を実現してきたマクファーレンのこと。きっと大成功を納めることでしょう。そして何より、彼の思い描いたヴェノムがスクリーンで大活躍する映画『ヴェノム』を、家のテレビやPC、スマホでも楽しんでください。

やり方にかなり問題があるが、実はいいヤツ(?)なヴェノム。©️ 2018 Columbia Pictures Industries, Inc. and Tencent Pictures (USA) LLC. All Rights Reserved. | MARVEL and all related character names: ©️& TM 2019 MARVEL.

4K ULTRA HD & ブルーレイセット【初回生産限定】¥6,800円(税別)、ブルーレイ&DVDセット¥4,743(税別) 発売元・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 

問い合わせ先/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント TEL:03-5205-0271
公式ウェブサイト http://www.venom-movie.jp