60年の写歴を一望。“時代”を切り取り続けるリビングレジェンド、立木義...

60年の写歴を一望。“時代”を切り取り続けるリビングレジェンド、立木義浩の傑作を目撃しよう。

文:ガンダーラ井上

『EVES』より 精密に計算された光と構図により、クルマと女性の肉体という2つのモチーフの間に化学反応が引き起こされた写真。 ©︎立木義浩

立木義浩(たつきよしひろ)は、日本写真界のリビング・レジェンド。昭和〜平成と時代を跨ぎ、数多くの広告やエディトリアルでの仕事や女性をモチーフとした作品において私たちの記憶に残るビジュアルイメージを生み出し続け、その活動は現在も進行中です。そんな立木のデビューから現在に至るまでの作品を一望する「時代−立木義浩写真展 1959-2019-」が、上野の森美術館で開催されます。

立木は1937年、徳島県生まれ。実家は日本にカメラが持ち込まれた明治の時代からシャッターの音が鳴り響いていた由緒ある写真館。いわば撮ることを宿命づけられた家柄で、東京の写真学校を卒業した後、1959年からカメラマンのキャリアをスタートさせます。立木の名を世に知らしめた大きなきっかけは、写真誌「カメラ毎日」の1965年4月号に掲載された『舌出し天使』でした。その号では特別に巻頭言もコラムも目次もブッ飛ばし、表紙を開くといきなり黒インクの乗った濃厚なモノクログラビアによる立木の作品が異例の扱いで56ページも続きます。その当時、立木の写真は「バタくさい」とよく言われていたそうですが、現在の視点で見れば極めてスタイリッシュ。まず写真術の確かな腕前があり、いわゆる承認欲求のカタマリのような撮影者のエゴは紳士的に抑制されているように感じます。良い家柄で育ったからこそ過剰に自我を発動しない。それゆえ立木の写真には“撮影者が向き合った時代”がしっかりと写しとられるのだと思います。

日本では新しい元号が始動したこのタイミングに、立木の撮り続けているスタイリッシュな写真を通じて“時代”を見つめてみてはいかがでしょうか。

『舌出し天使』より。何気ないスナップショットのようでありながら、恐ろしいほど克明にディテールが描き出されていることにも注目。 ©︎立木義浩 

『etude』より。練習曲というタイトルの写真集に収録された、22歳の立木が撮ったスタイリッシュな6×6判のモノクロ作品。 ©︎立木義浩 

スタジオでの本撮影の後に取られた勝新太郎・中村玉緒夫妻。オフショット風ではあるけれど完璧なライティング。 ©︎立木義浩 

『時代−立木義浩写真展 1959-2019-』
開催日時:2019年5月23日(木)~6月9日(日)
開催場所:上野の森美術館
東京都台東区上野公園1-2
TEL:03-3833-4191
開館時間:10時~17時 ※金曜日は20時 まで開館。※入場は閉館の30 分前まで。
料金:一般¥1,200
www.ueno-mori.org

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