映画『タンゴ・リブレ 君を想う』に観る、男の色気。

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    刑務所の看守をしている男がいる。これと言って刺激も変化もない生活。飼っている魚にエサをやる以外に、女もいないだろうことは聞くまでもない。そんな男の唯一の楽しみは週に一度のタンゴ教室。そこに、30代の女が現れる。手に、身体に、触れた瞬間、男はたちまち恋に落ちる。だが、彼女は務める刑務所の囚人の妻であり、また別の囚人の愛人でもあった……。この映画の見どころは、なんといっても「男が踊るタンゴ」だ。タンゴ教室に通う妻に、そして彼女に触れた男に激しい嫉妬心を燃やす夫は、リベンジに刑務所の中でタンゴを習得しようとし、彼女の心を決して離さない。その練習シーンが、なんとも色気がある。男と女の踊るタンゴがセックスを意味するならば、男同士のタンゴは男臭く、まるでみなぎり、ほとばしる「欲望そのもの」であり、つまりは「生命力」の現れだ。それはスクリーン越しであっても、目を釘づけにする。ひとりの女をめぐり、踊られるタンゴ。人間と言う生き物の性をめぐる舞い(戦い)は、すばらしくセクシーでカッコイイ。この映画は男とはどうあるべきかを情熱的なステップと色気で伝えてくる。(Pen編集部)

    『タンゴ・リブレ』
    監督:フレデリック・フォンテーヌ
    出演:フランソワ・ダミアン、セルジ・ロペス、ジャン・アムネッケル、アンヌ・パウリスヴィックほか
    2012年 ベルギー、フランス、ルクセンブルグ映画 1時間37分
    配給:ファインフィルムズ
    9月28日よりヒューマン トラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショー