ユーモラスな絵はやっぱり楽しい! 和田誠の展覧会が開催、日本のイラストレーションの歴史もわかります。

  • 文:内山さつき

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本展に作品が出展されるイラストレーターの似顔絵が描かれたポスター。イラストは和田誠、デザインは矢吹申彦によるもの。

いまではごく普通に使われる「イラストレーション」「イラストレーター」という言葉が、広く知られるようになったのは1960年代以降のこと。64年の東京イラストレーターズ・クラブの結成や、65年刊行の雑誌『話の特集』の表紙に人の目を引く鮮やかなイラストが使われ始めたことがきっかけで、「イラストレーション」というものの定義と「イラストレーター」という職業がしだいに浸透していったのです。日本においてこうしたイラストレーションの発展のキーパーソンが、『週刊文春』の表紙やタバコの「ハイライト」のデザインを手がけてきた和田誠です。

和田は1957年、多摩美術大学在学中にグラフィック・デザイナーの登竜門である日宣美賞を受賞。デザイナーとしての道を歩み始めます。デザインの仕事をしながら、「自分の絵を役立てるチャンス」と、雑誌広告で一コマ漫画を描いたり、日活映画のポスターを手がけたりするようになります。当時はまだはっきりと認知されていなかった「イラストレーター」という職業を周知するため、灘本唯人、宇野亞喜良、山下勇三、横尾忠則らとともに、東京イラストレーターズ・クラブを結成。年鑑の出版や展覧会の開催など、さまざまな活動を通してイラストレーションの可能性を広げていきました。

たばこと塩の博物館で開催中の『和田誠と日本のイラストレーション』展では、和田のイラストレーターとしての歩みをたどりながら、日本のイラストレーションの歴史を彩る数々のイラストレーター、デザイナーの作品を約200点展示。60年代以降の映画、舞台、広告などのカルチャーの変遷もよくわかる贅沢な構成です。なかでも必見は、普段は見せないという制作風景を収めた映像資料。作品を仕上げる心地よい熟練の手さばきに、見惚れてしまうはずです。


和田が高校2年生のときに描いた、先生の似顔絵入りの時間割表。

和田が日宣美賞を受賞した、映画『夜のマルグリット』のポスター。

横尾忠則を和田のイラストで表紙モデルにした、雑誌『話の特集』1981年5月号の表紙。同誌のアート・ディレクションも和田が手がけています。

『週刊文春』1977年5月12日号の表紙。和田はこの号から表紙を書き始め、2017年7月12日号で2000作目を迎えました。

『和田誠と日本のイラストレーション』

開催期間:2017年9月9日(土)~10月22日(日)
開催場所:たばこと塩の博物館
東京都墨田区横川1-16-3
TEL: 03-3622-8801
開館時間: 10時~18時 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(10月9日をのぞく)、10月10日(火)
入館料:一般¥100(税込)
https://www.jti.co.jp/Culture/museum