名建築で知られるベルリンのユダヤ博物館が全面リニューアル

  • 文:河内秀子

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BERLINベルリン

名建築で知られるベルリンのユダヤ博物館が全面リニューアル

文:河内秀子

映像試聴室にはやわらかい中間色や曲線を多く使用。リベスキントの建築の特徴でもある、斜めに切り込む窓の鋭さが強調されている。Photo:Gianni Plescia

ヨーロッパ最大のユダヤ博物館として2001年に開館した「ベルリン・ユダヤ博物館」が、2年間のリニューアル期間を経てこの8月末、再びその門戸を開いた。脱構築派建築家のダニエル・リベスキントによる建築で有名なこの博物館。ジグザグの形をした建物に、剃刀で切りつけたような形の窓や、息が詰まるような鋭角の空間、斜めに傾く壁、迷路のような廊下などが、ユダヤ人の苦しみの歴史を表現している。

これまでは展示物がない方が建築のもつ強いメッセージが感じられてよい、との声もあった。リニューアルした常設展では、展示物と建築が表現する世界観が呼応するよう展示法を工夫。また、新たな研究成果や、ドイツにおけるユダヤ人の現状も盛り込んでいる。

最上階から始まる常設展は3500㎡にもおよび、ドイツにおけるユダヤ人の歴史から独特の風習、現代の暮らしまで膨大な情報量で伝えていく。今回特に力を入れたのは、反ユダヤの動きとホロコースト、戦後における東西ドイツの再出発についてのコーナー。1フロアを使い、ドイツ社会の一部としてユダヤ文化が語られる。さらに、ドイツに生きる多様なユダヤ人へのインタビューをインスタレーションのように見せるコーナーも設置。生き生きとした言葉でユダヤカルチャーが語られ、親近感や興味が湧く。何度でも訪れ、じっくりと味わいたい展示だ。

地下1階から地上3階まで続く長く急な階段をのぼっていくと、常設展示の入り口に到着する。先の見えない道を歩かされたユダヤ人の痛みを思う。Photo:Gianni Plescia

ユダヤ教の教え「トーラー」についてのコーナー。来場者が祈りを捧げられる「願いの木」が佇んでいる。Photo:Gianni Plescia

Jüdisches Museum Berlin
Lindenstrasse 9–14, 10969 Berlin
TEL:030 -259-93-300
(U)HALLESCHES TOR
開館時間:10時~19時
休館日:2020年9月19、20、28日
入場料:一般8ユーロ
https://www.jmberlin.de/