ソフィア・コッポラ監督最新作、映画『ブリングリング』に観る衝撃の事実。

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    「ブリングリング」という言葉を知っていますか? 答えがNOなら、この映画は見るべきです。

    ヒップホップシンガーのB.G.(ビージー)が1999年に発表したアルバムに収録されている曲のタイトルで、この曲のヒットによって「高価な宝石」や「浪費と見せびらかしに明け暮れる人生」を意味するスラングとして定着した言葉です。

    さて、映画『ブリングリング』は、そんなキラキラした暮らしをする“セレブリティ”たちに憧れる高校生グループが起こした実在の事件をベースに展開します。女子高生レベッカをリーダーとする仲良し5人グループは、着る服に「物足りなさ」を感じると、ネットでセレブの豪邸の場所を調べ出し、次々に侵入。ドレスや宝石や現金を盗み出していました。そして、それら盗品で身を飾り、夜な夜なクラブに通い、華やかな自分たちの写真を撮ってSNSにアップ。まるで自らもセレブであるかのように振る舞う彼女らですが、その半面、セレブではない自分にも気づいているのか、心の底ではセレブになる日を猛烈に願っている心情がスクリーンからにじみ出ます。

    忍び込んだ先は、パリス・ヒルトン、リンジー・ローハン、オーランド・ブルーム……と、世界中が知るセレブリティの豪邸。実際の被害者でもあるパリス・ヒルトンが自邸をロケ地に提供しているのも衝撃的です。

    ユースカルチャーのリーダーとなってゆく彼女らは、ついには逮捕へと至るのですが、カメラは彼女たちを離しません。人気情報番組は逮捕後も彼女らを「ブリングリング窃盗犯」と呼んで追いかけ続け、懲役刑を言い渡されるも、服役後に再びカメラを向け、フラッシュを浴びせ続けるのです。

    そこに罪の意識はあるのか? 罪とは何なのか? と大人には理解できない空気が世代の溝を深めます。振り返れば、インターネットが普及したのはほんの10年前、SNSはここ5年ぐらいのもの。かつてなかったものがいまは当たり前のようにある。そんな情報過多の社会で生まれ育った若者たちは、いったい何処へ行くのでしょうか? そう問いかけ続ける、身と心は曇り、ついには凍る1時間30分を過ごしたならば、それはもはや若くないしるしなのでしょうか?(Pen編集部)

    『ブリングリング』(R15+)
    監督:ソフィア・コッポラ
    出演:エマ・ワトソン、ケイティ・チャンほか
    2013年 アメリカ、フランス、イギリス、日本、ドイツ合作 1時間30分
    配給:アークエンタテインメント/東北新社
    12月14日より渋谷シネクイントほか全国順次ロードショー