マーティン・スコセッシが「遠藤周作」の原作を完全映画化した、『沈黙-サ...

マーティン・スコセッシが「遠藤周作」の原作を完全映画化した、『沈黙-サイレンス-』がいよいよ公開!


師を追って日本へやって来る若きポルトガル人宣教師(左)を演じるのは、『アメイジング・スパイダーマン』のアンドリュー・ガーフィールド。

遠藤周作の『沈黙』をマーティン・スコセッシが映画化する。胸躍るプロジェクトが実際に動き出したというニュースを耳にしたのは、何年前だったでしょうか。イタリア移民の子としてニューヨークで生まれ育ち、マフィアか宣教師になりたかったというスコセッシが、原作と出合ってから28年もの月日をかけて完成させた映画が、ついに公開されます。

江戸幕府による激しいキリシタン弾圧が行われていた17世紀の長崎。日本で棄教したという高名な宣教師を追い、弟子のロドリゴとガルペが海を渡ってやって来るところから、苛烈な物語は幕を開けます。

信仰を捨てることは“転ぶ”と表現され、「転べ、転べ」とそれはもう執拗に幾度も弾圧の描写が続きます。ロドリゴは貧しく高潔な村人たちの信仰心に胸打たれ、自分が“転ぶ”ことで彼らを救えるのではないか? 真の信仰とは何か? なぜ神は沈黙しているのか?と、極限の状況の中で自らに問うていく。ナレーションも含めてあくまでもすべてが淡々と繰り返されることが恐ろしく、尋常ではない緊張感をたたえたまま、じわじわと観る者にあらゆる問いが迫ってきます。ロドリゴの決断やその後の人生、そして自然のなかに神を見出す日本人の精神性にも触れられていて、まさに小説『沈黙』への敬意に満ちた“完全映画化”だと感じました。

京都のスタッフたちが衣裳や美術にも入っているからか、いわゆるトンデモ描写は見当たらず、“外国人監督が描く日本”への心配は、観始めてすぐに頭からすっかり消えてしまうはずです。そして勝手に誇らしい気持ちになってしまうほど素晴らしいのが、窪塚洋介をはじめとする日本人の役者たち。何度も裏切り、告解し、痩せた体でひょいひょいとスクリーンを横切りながら生き延びていく窪塚演じるキチジローは、神は愚かな弱者を許してくれるのか?という根源的なテーマを体現し、さらに浮き彫りにする存在です。海の中で磔にされる壮絶なシーンに挑んだ塚本晋也、長崎奉行の井上筑後守を軽妙かつ異様な凄みで演じたイッセー尾形。ヒールでありながら奇妙な友情のようなものを感じさせる通辞役の浅野忠信。スコセッシの熱に応えた日本人キャストの共演を、ぜひスクリーンで目撃してください。(細谷美香)

イッセー尾形(右)はロサンゼルス映画批評家協会賞にて助演男優賞の次点に選出されるなど、高い評価を得ている。

何度かのオーディションを得て、重要な役どころであるキチジロー役をつかんだ窪塚洋介。

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『沈黙-サイレンス-』

原題/Silence
監督/マーティン・スコセッシ
出演/アンドリュー・ガーフィールド、アダム・ドライバー、浅野忠信、窪塚洋介、イッセー尾形、塚本晋也、リーアム・ニーソンほか
2016年 アメリカ映画 2時間42分
配給/KADOKAWA1月21日より新宿ピカデリーほかにて公開。
http://chinmoku.jp

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