現役医師が教える、サウナで「ととのう」条件と正しい入浴方法

  • 文:高野智宏
  • イラスト:泰間敬視

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心と身体がととのい、健康効果が高いとされるサウナ。そこで、サウナで「ととのう」条件と正しい入浴方法について、現役医師であり日本サウナ学会代表理事の加藤容崇さんに聞いた。


Q1. 「ととのう」とは、どんな状態のことですか?

A1. 身体はリラックスし、頭は興奮した状態のこと

高温のサウナと水風呂による超温冷交代浴は、その温度差からもわかるとおり、実は身体に負荷をかける行為です。その結果、体内は交感神経が優位となり、アドレナリンなどの物質が放出された状態に。そして、そのまま外気浴や休憩へ移行すると、神経は副交感神経の優位へと速やかに切り替わりますが、アドレナリンの代謝には時間がかかるため、体内に残ったまま。つまり、身体はリラックスしているのに頭は興奮中となるのです。この高揚感が得られる感覚を「ととのった」と表現するのです。ただし、この状態が続くのは、アドレナリンが代謝されるまでの約2分間だけです。


Q2. 「ととのう」ために、必要な条件はありますか?

A2. 疲れていて、かつ空腹、そんな状態が理想的です

サウナ入浴前に仕事や運動で心身ともに疲労していることが重要です。「ととのう」ための条件として、自律神経の機能が低下している状況が適していて、サウナはこの自律神経を回復させる効果があります。つまり、回復前後の自律神経の状態に落差があるほど「ととのいやすく」なるというわけです。また、空腹状態であることも重要です。サウナでは身体の冷却のため血流が皮膚に多く分布し、サウナから水風呂への急激な環境の変化により交感神経が優位となります。その結果、満腹の状態でサウナに入ると消化管に血流が行かなくなり、消化不良を原因とする腹痛などを起こす危険性があるのです。


Q3. 「ととのう」ことで、どんな効能がありますか?

A3. 冷え症や自律神経失調症、不眠症に効くと思われます

自律神経の乱れに効果的だと思われます。加齢により自律神経の機能は徐々に低下しますが、サウナにより機能が上昇します。疲労により自律神経の機能が60歳代まで下がっていた30歳代の方が、20歳代まで回復した例もありました。冷え症や不眠症の方にもお薦めです。眠気のスイッチは実は体温の分布にあります。身体が「ON」の時は深部体温が高く皮膚表面の温度が低くなりますが、「OFF」の時は逆になります。サウナから出た直後は超「ON」の状態。その後、数時間かけて元の深部体温よりも低くなる一方で皮膚表面が高くなり、超「OFF」の状態になります。結果、眠りがよくなり深い睡眠がとれるようになるのです。

Q4. コロナ禍において、サウナ利用は安全ですか?

A4. ルールをしっかり守り、安全に入浴してください

「室温が高くウイルスも死滅する」との説は間違いです。温度計が90℃を指していても座面は70℃程度。コロナは70℃でも5分間は感染性を失わないことが報告されています。感染者の飛沫を浴びれば感染する可能性は高いのです。感染防止対策に沿って利用すれば、そこまで危険ではないと考えられます。ただしブームのいま、数人でやってきて会話している場面に遭遇しますが、コロナ禍では「黙浴」を願いたい。重要なのは施設の対策のみならず利用者も協力してこそ成り立つということ。改めてマナーの再確認をするべきです。


Q5. サウナがNGなのは、どんな状態の時ですか?

A5. 運動が負担になる状態、また飲酒後も厳禁です!

サウナによる心臓への負担は、ウォーキングなど軽い運動と同程度。心筋梗塞を患った方や高血圧の方など、軽い運動の負荷に耐えられない方は入るべきではありません。また、飲酒後や二日酔いの状態も危険です。アルコールやアセトアルデヒドが体内に残っていると腎臓で尿を濃縮することができなくなり、水がじゃじゃ漏れになるということ。つまり、水分を摂っても脱水状態は解消されません。そんな状態でさらに発汗を促すサウナに入れば、危険極まりない。二日酔いでサウナに入るとスッキリするのは、酔いが覚めかけた状態で交感神経が優位になるため。ただの誤解なのです。


Q6. 理想の入浴目安を、教えてください


A6. 温度でも時間でもなく、心拍数を基準にしましょう

週2〜3回程度が目安で極端な頻度や温度は避けましょう。よく「何℃のサウナに何分入ればよいか?」と聞かれますが、私は温度でも時間でもなく、心拍数を基準とすることを推奨しています。サウナでは、軽い運動程度の負荷がかかります。運動時の自身の心拍数を把握しておき、その心拍数になったらサウナ室を出る。なお、心拍数は曲のBPMが指標になります。私の場合、心拍数120が軽い運動程度になりますが、山下達郎の『クリスマス・イブ』が少し遅いくらい。フジファブリックの『若者のすべて』と心拍が同調したら、水風呂へ行くようにしています(笑)。


加藤容崇●日本サウナ学会代表理事/慶應義塾大学医学部特任助教
1983年、群馬県生まれ。北海道大学医学部卒。専門はがん(膵臓がん)の遺伝子検査と研究。世界中の健康習慣を最新科学で解析することを第二の専門にする。サウナを科学し発信する「サウナ学会」を設立。著書に『医者が教えるサウナの教科書』(ダイヤモンド社)などがある。


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※この記事はPen 2021年7月号「コーヒーとグリーン、ときどきポッドキャスト」特集より再編集した記事です。