野村訓市が選ぶ、井上陽水楽曲のMY BEST 3──記憶や感情を巧みに綴る言葉が、心象風景を刺激する。

  • 文:杉本勝彦

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1位.最後のニュース (『ハンサムボーイ』収録)

2位.5月の別れ (『UNDER THE SUN』収録)

3位.海へ来なさい (『スニーカーダンサー』収録)


店舗のデザインから雑誌制作まで多方面でクリエイティブな手腕を発揮する野村訓市さんが、井上陽水を知ったのは小学生の頃の歌番組。その異質さを色濃く記憶している。

「変わった歌詞で、歌い方も普通じゃないし、どこか怪しいと思ったのを覚えています。でも、そんな印象が変わったのは『少年時代』のような感傷的な曲を聴いてから。つまり僕自身が過去を懐かしむようになった時だと思います。記憶や感情を言葉に置き換えるのは難しいものですが、陽水さんの不思議な言葉の組み立てが、僕の心象風景にとても合った」

井上陽水の歌詞に「言葉を伝える方法」を学んだという野村さん。「最後のニュース」でも、そんな陽水の言葉が響く。

「歌い出しは世界情勢を歌っている大きな物語なのに、サビでは《今 あなたにGood-night ただ あなたにGood-bye》と個人的な感情に突然転換する。それがとても深く、深く、心からのグッドナイトに聞こえ、胸に刺さる」

野村訓市●1973年、東京都生まれ。2004年に設立した「TRIPSTER」では店舗設計や建築デザインを行う。内装を手がけた、神楽坂のもと料亭を改装したブティックホテル「TRUNK (HOUSE)」が話題に。

こちらの記事は、Pen 2020年5月1・15日合併号「【完全保存版】井上陽水が聴きたくて。」特集からの抜粋です。