真夏に聴きたいネオ・シティポップガイド Vol.2

  • 文:松永尚久

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1970年代〜80年代発のシティポップが再評価される昨今。その流れを紡ぎ、2010年代以降の風景を鮮やかに描く新世代をピックアップ。全3回にわたって紹介する。

Suchmos ──アーバンで刺激的なグルーヴを、メジャーシーンに轟かせた6人組。

サチモス●メンバーは、YONCE(Vo)、HSU(B)、OK(Dr)、TAIKING(G)、KCEE(DJ)、TAIHEI (Key)。2013年に神奈川県で結成。15年に初アルバム『ザ・ベイ』を発表。最新作『ジ・アニマル』は19年にリリースされた。

ロックやジャズ、ヒップホップ、ソウルミュージックなどに影響を受け、アメリカのジャズトランペット奏者、ルイ・アームストロングの愛称「サッチモ」からバンド名を付けたというサチモス。

アシッド・ジャズのグルーヴを感じさせる2016年発表の「STAY TUNE」など、あらゆる刺激が街にあふれていた1990年代のストリート感覚とブラック・ミュージックを融合。現在を軽やかに走るような楽曲で、幅広いリスナーから注目を浴び、シティポップというジャンルを一気にメジャーなものへと押し上げた。

この楽曲以降「街」を飛び出し、世界や宇宙を感じるサウンドを展開している。現在は活動休止中だが、今後の動向に注目したい。

『ジ・アニマル』Suchmos KSCL-3150 ソニー・ミュージックレーベルズ ¥3,850

never young beach ──ノスタルジックな感覚を、現代的なサウンドに昇華。

ネバーヤングビーチ●メンバーは、安部勇磨(Vo&G)、 阿南智史(G)、巽啓伍(B)、鈴木健人(dr)。2014年結成。最新作は20年5月発売のシングル「サイダーのように言葉が湧き上がる」。

日本語の響きを大切にしながら、メンバー全員の個性やこだわりが伝わってくるサウンドで人気を博している4人組。愛称は「ネバヤン」。

細野晴臣や、はっぴいえんどなどからの影響もあるようで、そのノスタルジックな感覚を現代的なセンスでもって、爽快感あふれる音楽に昇華。まるでタイムマシンに乗ってさまざまな時代を行き来しているような、不思議な気分にさせてくれる。現代のシティポップシーンを代表する存在だ。

「サイダーのように言葉が湧き上がる」never young beach  VICL-37536 スピードスター ¥1,100

Yogee New Waves ──過去の多彩な音楽を吸収し、シンプルな音色に集約させる。

ヨギー・ニュー・ウェーブス●メンバーは、角舘健悟(Vo&G)、粕谷哲司(Dr)、竹村郁哉(G)、上野恒星(B)。2013年より活動開始。19年3月に最新アルバム『BLUEHARLEM』をリリース、その後、中国をはじめとする東南アジア公演も成功させている。

70年代のフォークやニュー・ミュージックの流れを感じさせる、アコースティックな音色をメインにしたシンプルなサウンドを奏でる彼らは、デビュー時からシティポップの再来といわれる。

角舘健悟のボーカルは、日常を俯瞰で見つめつつも春風のような温かな視線を感じさせる。過去のさまざまな音楽を吸収し、必要なものだけを抽出した表現は卓越している。時代を自由に乗りこなす軽やかなビートは、耳にしたら離れない。

※こちらはPen 2021年4月1日号「大滝詠一に恋をして。」特集よりPen編集部が再編集した記事です。