ラース・フォン・トリアー最新映画、『ニンフォマニアック』(=色情狂)が衝撃的過ぎる。

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    聞きなれない言葉、NYMPHOMANIAC(ニンフォマニアック)。辞書を調べると、“色情狂”と出ています。つねに挑戦的な映画をつくりつづけるラース・フォン・トリアー監督の最新作は、その“色情狂”の女性が主役です。幼いころに、友人とバスルームに水をまき、“カエルのごとく”女性器を床にこすりつけて滑る遊びから、彼女の性への執拗な欲求は開花してゆきます。一日に複数の男性とセックスを繰り返す日々。しかも、同じ男性との交渉はNGなど、少女の性は成長とともにエスカレートし、飽きることなき探究心は、乱交、SMプレイや同性愛など、あらゆるオーガズムのカタチへとシフトしてゆきます。

    ともすれば、生々しく、グロテスクで、反社会的にもなりうるこのテーマ。それを、ラース・フォン・トリアー監督は、何と、「魚を釣る方法」「バッハの音楽理論」「東方教会と西方教会」など、世の中の、正しく、美しく、ときに優美なものたちに落としこみ、説明してしまうのです。そのさまは、実に滑稽で、ニヤリと笑うのをこらえることができません。男たちには知りえない女性の色情という禁断の世界を、まるで「初心者向けガイドブック」のようにチャプターで区切り、下半身がうずくような官能的シーンをはさんで観客を喜ばせつつ、丁寧に理解へと導いてゆくそのテクニックは“さすが”です。

    主役となる少女は、幼少期、青年期、そして成熟期と、段階を経て、演者が交代していくのですが、なんと、最後の成熟期を演じるのは、かのシャルロット・ゲンズブールです。近年まれにみるほどの、衝撃的で、モダンで、挑戦的で、スタイリッシュで、そしてインタラクチャルな映画です。見ない理由はありません。さぁ、禁断の書のページをめくってください。(Pen編集部)

    映画はVol.1とVol.2の2部構成(公開日が異なります)。タブーともいえる内容を素晴らしい作品へと昇華させた演者には、シャルロット・ゲンズブールほか、『キル・ビル』のユマ・サーマン、『トゥルー・ロマンス』のクリスチャン・スレイター、『トランスフォーマー』のシャイア・ラブーフ、『ドラゴン・タトゥーの女』のステラン・スカルスガルドほか世界の実力派が集結しています。

    『ニンフォマニアック』

    監督・脚本:ラース・フォン・トリアー
    出演:シャルロット・ゲンズブール
    2013年 デンマーク・ドイツ・フランス・ベルギー・イギリス映画 1時間57分(Vol.1)、2時間3分(Vol.2)
    配給:ブロードメディア・スタジオ
    Vo.1は10月11日(土)から、Vol.2は11月1日(土)から、新宿武蔵野館、ヒューマントラスト シネマ有楽町・渋谷ほか全国で順次ロードショー
    www.nymphomaniac.jp