『そして父になる』と見比べたい、映画『もうひとりの息子』がヒリリと胸に痛い。

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    我が子を取り違えた父親たちの葛藤を描く映画『そして父になる』がヒットしています。もし、その“取り違え”が海外で起こったら、同じような物語になるのでしょうか?

    『もうひとりの息子』はまさに、時を同じくして作成された取り違え映画。ですが、この映画が焦点を当てるのは、取り違えられた子どもたちです。運命の皮肉、湾岸戦争のさなか、パレスチナ人の息子はテルアビブに暮らすフランス系イスラエル人の家族のもとへ、イスラエル人の息子はパレスチナの貧しい機械工の家族のもとへと取り違えられました。

    それに気づいた18歳のある日、立場は一瞬にして180度変わります。国を隔てる大きな壁の両側で対立する民族、国家、憎悪、愛情が、静かにふたりの生活に変化を強いて、優越感は劣等感と、貧しさは富と、束縛は自由と入れ替わり……。観客はその様に、「人とは何をもって存在価値を持つのか」というトリックに悩まされます。これがもし自分のことだったら、何を思い、どう行動するのでしょうか…

    平和ボケしている日本人には想像もつかないかもしれません。(Pen編集部)

    『もうひとりの息子』
    監督:ロレーヌ・レヴィ
    出演:ジュール・シトリュク、マハディ・ザハビ
    2012年 フランス映画 1時間41分
    配給:ムヴィオラ
    10月19日よりシネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー